天井クレーンの年次点検とは|クレーン等安全規則第34条・荷重試験・性能検査の違い

プラント保全・クレーン

天井クレーンの年次点検は、安全に使い続けるための重要な法定点検です。

現場では「年次点検」と呼ばれることが多いですが、クレーン等安全規則では「定期自主検査」として定められています。

天井クレーンは、日常的に問題なく動いているように見えても、ブレーキ、ワイヤロープ、電気設備、安全装置、走行・横行・巻上装置などに少しずつ劣化や異常が進行していることがあります。

重大な事故を防ぐためには、外観確認だけではなく、実際に定格荷重をつった状態で動作を確認する荷重試験も重要です。

この記事では、天井クレーンの年次自主検査、荷重試験、性能検査の違いを整理します。

年次点検とは|クレーン等安全規則第34条の定期自主検査

クレーン等安全規則第34条では、事業者に対して、クレーンを設置した後は1年以内ごとに1回、定期に自主検査を行うことを求めています。

一般的に「年次点検」や「年次検査」と呼ばれているものが、この定期自主検査です。

ただし、1年を超える期間にわたり使用しないクレーンは、使用していない期間中の検査が免除されます。その場合でも、再び使用を開始する際には自主検査が必要です。

また、自主検査の結果は記録し、3年間保存する必要があります。検査で異常が認められた場合は、補修など必要な措置を行った上で使用することが重要です。

年次自主検査で確認する主な項目

天井クレーンの年次自主検査では、単に「動くかどうか」だけを見るわけではありません。

設備の構造、機械装置、電気設備、安全装置などを総合的に確認します。

主な確認項目は、次のようなものです。

  • ランウェイ、ガーダ、サドル、トロリフレームなどの鋼構造部分
  • 走行装置、横行装置、巻上装置の電動機、ブレーキ、歯車、軸、軸受、車輪
  • ドラム、シーブ、ワイヤロープ、フックブロックなどの巻上関係
  • 配電盤、コントローラ、集電装置、機内配線などの電気関係
  • 巻過防止装置、非常停止装置、過負荷警報装置、衝突防止装置などの安全装置
  • 荷重試験

天井クレーンは、走行・横行・巻上の複数動作が組み合わさる設備です。

そのため、機械部分だけでなく、電気制御や安全装置まで含めて確認することが大切です。

荷重試験が重要な理由

年次自主検査では、原則として荷重試験を行う必要があります。

荷重試験は、クレーンに定格荷重に相当する荷をつり、定格速度でつり上げ、走行、トロリ横行などの動作を行って確認する試験です。

無荷重での試運転では問題がなくても、実際に荷がかかった時に初めて現れる異常があります。

たとえば、次のような点です。

  • ブレーキの保持力が不足していないか
  • 巻上装置、走行装置、横行装置に異音や振動がないか
  • インバータや制御回路が負荷時に正常に動作するか
  • 過負荷警報装置や安全装置が適切に機能するか
  • ワイヤロープ、フック、つり具に異常がないか
  • 走行・横行時に偏り、引っ掛かり、異常な振れがないか

荷重試験は、クレーンが実際の使用条件に近い状態で安全に機能するかを確認するための重要な工程です。

なお、年次自主検査および性能検査における荷重試験は、原則として定格荷重相当の荷で行います。

落成検査などで出てくる「1.25倍荷重」と混同しやすいため、試験の種類ごとに必要な荷重条件を確認することが大切です。

年次自主検査で荷重試験を省略できる場合

年次自主検査では荷重試験が原則必要ですが、クレーン等安全規則第34条には例外があります。

主な例外は、次のとおりです。

  • 年次自主検査を行う日前2か月以内に、性能検査における荷重試験を実施している場合
  • 年次自主検査の日から2か月以内にクレーン検査証の有効期間が満了し、性能検査を受ける予定である場合
  • 発電所、変電所など、荷重試験を行うことが著しく困難な場所に設置されており、所轄労働基準監督署長が荷重試験は不要と認めた場合

ただし、「もうすぐ性能検査があるから」と自己判断で荷重試験を省略するのは危険です。

検査証の有効期限、性能検査の予定日、設備の設置環境などを確認した上で、必要に応じて所轄労働基準監督署や登録性能検査機関へ確認することをおすすめします。

性能検査とは|年次自主検査との違い

性能検査は、クレーン検査証の有効期間を更新するために受ける検査です。

年次自主検査と同じく安全確認のための検査ですが、目的と実施者が異なります。

年次自主検査は、事業者が実施する法定の自主検査です。

一方、性能検査は、登録性能検査機関などによる検査を受け、クレーン検査証の有効期間を更新するためのものです。

性能検査では、クレーン各部の構造および機能について点検を行うほか、荷重試験も行われます。

性能検査の荷重試験も、定格荷重に相当する荷をつり、定格速度でつり上げ、走行、横行などの動作を行う方法です。

つり上げ荷重別|性能検査が必要なクレーン

一般的な天井クレーンでは、つり上げ荷重によって性能検査の要否が変わります。

つり上げ荷重0.5t未満

クレーン等安全規則の適用除外となる範囲です。

ただし、法令上の適用除外であっても、事故防止のためには定期的な点検を行うことが望まれます。

つり上げ荷重0.5t以上3t未満

年次自主検査の対象です。

性能検査およびクレーン検査証の更新は、原則として不要です。

つり上げ荷重3t以上

年次自主検査に加えて、性能検査の対象となります。

一般的にはクレーン検査証の有効期間に合わせて、原則2年ごとに性能検査を受けます。

ただし、性能検査の結果により、検査証の有効期間が短縮される場合や、3年以内の範囲で更新される場合があります。

なお、スタッカー式クレーンは、つり上げ荷重1t以上から特定機械等として扱われるため、一般的な天井クレーンとは基準が異なります。

年次自主検査と性能検査を混同しない

年次自主検査と性能検査は、どちらも荷重試験を行うことがあるため、混同されやすい検査です。

しかし、それぞれ役割が異なります。

年次自主検査は、日常的に使用するクレーンの安全状態を、事業者が毎年確認するための検査です。

性能検査は、特定機械等に該当するクレーンについて、検査証の有効期間を更新するために受ける検査です。

つり上げ荷重3t以上の天井クレーンでは、性能検査を受けているから年次自主検査が不要になるわけではありません。

ただし、性能検査の荷重試験を年次自主検査の前後2か月以内に実施する場合は、年次自主検査側の荷重試験を省略できる場合があります。

検査の時期を計画的に調整することで、設備停止や試験準備の負担を抑えられることがあります。

主な登録性能検査機関

つり上げ荷重3t以上のクレーンで性能検査を受ける場合は、登録性能検査機関へ依頼します。

対応地域、対象機械、検査日程、準備する荷重、検査前の整備範囲などは機関ごとに異なるため、余裕を持って確認することが大切です。

主な登録性能検査機関の例として、次のような機関があります。

一般社団法人 日本クレーン協会
性能検査・検定
シマブンクレーン検査株式会社
性能検査
公益社団法人 ボイラ・クレーン安全協会
性能検査

※上記は登録性能検査機関の一例です。特定の機関を推奨するものではありません。実際の受検にあたっては、対応地域、対象機械、検査日程、必要書類、検査準備の内容を各機関へ確認してください。

まとめ

天井クレーンの年次点検は、単なる書類上の手続きではありません。

クレーン等安全規則第34条に基づく年次自主検査では、設備の状態を確認し、原則として定格荷重相当での荷重試験を行います。

特に、つり上げ荷重3t以上の天井クレーンは、年次自主検査に加えて性能検査も必要です。

年次自主検査、月次自主検査、作業開始前点検、性能検査をそれぞれ適切に実施し、クレーンを安全に使用できる状態に保つことが重要です。

※本記事は、一般的な制度および点検の考え方を紹介するものです。クレーンの種類、構造、設置場所、検査証の有無、所轄行政機関の取扱いなどにより必要な対応は異なります。実際の点検・性能検査・手続きについては、所轄労働基準監督署、登録性能検査機関、メーカーまたは専門業者へ確認してください。

参考資料

クレーン等安全規則(厚生労働省)
天井クレーンの定期自主検査指針(安全衛生情報センター)

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