サンフレッチェ広島の大旗専用エリアを考える|応援文化と未来の一席

紫の大旗が揺れるサッカースタジアムで、ピッチを見つめる親子を描いたイメージイラスト スポーツ・観戦

大旗が揺れるスタンドには、長くクラブを支えてきた人たちの思いがあります。苦しい時期にも応援を続け、今のサンフレッチェ広島につながる景色を守ってきた。その歩みには、敬意を持ちたいと思います。

同じように、これから初めてスタジアムを訪れる人にも、大きな価値があります。

大旗の文化を受け継ぎながら、少しでも多くの人が観戦できる運用に近づけないか。エディオンピースウイング広島の大旗専用エリアについて、公式資料で分かることを整理し、改善の可能性を考えます。

本記事は2026年10月20日(日本時間)に確認した公表資料に基づきます。トップチームの主管試合を中心とし、レジーナや他主催者の試合の運用とは区別しています。席数の計算と、FORGRAFT LABの意見・提案は、それぞれ明示しています。

大旗は、新スタジアムだけで始まった応援ではない

大旗は、旧エディオンスタジアム広島の時代から認められてきた応援方法です。

例えば、2022年の公式チケット案内では、サポーターゾーン席とビジターゾーン席について、それぞれ座席最前列での大旗使用を認めていました。ピースウイング開業後に突然生まれた応援ではありません。

ただし、スタジアムの環境は変わりました。旧本拠地は陸上トラックを備える競技場です。一方、ピースウイングの公式施設紹介は、ピッチと観客席の距離を各方面最短8mとしています。

選手に近いことは、新スタジアムの魅力です。同時に、旗の動きや保管場所について、観客だけでなくピッチ側のスタッフやカメラマンも含めて考える必要があります。

文化を大切にすることと、新しい環境に合わせて運用を見直すことは、両立できるはずです。

大旗の一時禁止と再開は、安全を巡る見直しだった

ピースウイングでは、開業直後に大旗の使用が一時禁止されています。

発表・資料の時点確認できる内容
2024年2月20日発表2月10日のプレシーズンマッチで安全面の問題が生じたとして、2月23日の浦和戦から当面、大旗の使用を禁止
2024年4月5日発表4月7日の湘南戦から、専用エリアに限って大旗使用を再開
現在リンクされている2026年7月版案内最前から3列分を大旗エリアとし、前2列は振る・置くために閉鎖。使用者はその後ろの3列目を利用

出典:一時禁止の告知、使用再開の告知、ホーム向け現行案内・11ページ、ビジター向け現行案内・10ページ

なお、2024年の再開告知にある「最前列」という説明を、そのまま現在の使用位置として扱うことはできません。現在の詳細案内では、前2列を安全のためのスペースとし、使用者が3列目に入る構成になっています。

安全確保のために設けられたスペースには理由があります。見直す場合も、閉鎖を減らした状態で同等の安全を確保できるかが出発点になります。

大旗専用エリアは何席なのか

「エリア全体」「閉鎖席」「使用者用席」を分ける

大旗専用エリアの全席が、誰も利用しない閉鎖席というわけではありません。

現行案内では、前2列を旗の動作・保管のために閉鎖し、その後ろの1列を大旗使用者が利用します。

このため、少なくとも次の四つを分けて確認する必要があります。

  • エリアの総座席数:大旗運用の対象となる範囲全体。
  • 閉鎖席数:安全のため、観客が利用しない座席。
  • 使用者用席数:大旗を使う人に割り当てられる座席。
  • 一般販売対象外の枚数:チケット販売上、通常の購入枠から外される枚数。

特に自由席では、特定の場所に座れないことと、席種全体の販売枚数をその席数だけ減らしていることは、同じ意味ではありません。販売上限や専用枠の内訳まで確認して初めて、販売機会への影響を判断できます。

ホーム側は総席数を確定できない

確認時点の公式案内では、ホーム側は南スタンドのサポーターシート自由席内に、専用エリアが1区画図示されています。

ただし、図示された区画の正確な座席番号や、各列の対象席数までは特定できませんでした。写真に引かれた線の長さだけで、何席分かを確定することもできません。

確認した公表資料では、ホーム側のエリア総席数、閉鎖席数、使用者用席数は、公式には確認できません。

ビジター側は、公式図面から45席相当と計算できる

ビジター側の現行案内は、対象を150ブロックの最前3列と明示しています。

これを公式の2026年版詳細座席図と照合すると、同ブロックの最前側は7列・8列・9列と表示され、それぞれ座席番号1~15が記載されています。

したがって、図面とルールを組み合わせると、次のように計算できます。

区分ビジター側の計算
大旗エリア全体15席×3列=45席相当
前2列の閉鎖部分15席×2列=30席相当
大旗使用者用の3列目15席×1列=15席相当

これは公式資料を照合した本記事の計算です。クラブが「合計45席」と発表した集計値や、各試合の実利用人数ではありません。 また、使用者用15席は、毎試合15人が利用しているという意味ではありません。

確定できる範囲と、できない範囲

調査項目ホーム側ビジター側
現行案内で示される区画図示1区画150ブロックの1区画
対象列数最前から3列最前から3列
エリア総座席数確認できない図面上45席相当と計算
閉鎖席数前2列。席数は確認できない図面上30席相当と計算
使用者用席数3列目。席数は確認できない図面上15席相当と計算
実際の使用者数確認できない確認できない
一般販売から除外する枚数内訳を確認できない内訳を確認できない

ビジター側の45席相当は、通常の観客が自由に使える45席という扱いではありません。ただし、それをそのまま「一般販売されないチケット45枚」と言い換えるには、販売方法の確認が必要です。

ホーム側を含む総数が分からないため、本記事では、一般販売対象外が通常何席から何席なのかという幅も示しません。 確認できたビジター側の計算を、スタジアム全体の数字に広げることも避けます。

応援先導席106席は、大旗の閉鎖席数ではない

現行のホーム向け案内・6ページには、応援先導席を106席設け、カバーのある席は一般の観客が確保できない旨が記されています。

一方、2025年10月2日のルール変更告知では、当時の応援先導エリアは77席と案内されていました。現在の説明には、現行案内の106席を用いる必要があります。

ただし、応援先導席と大旗専用エリアは、資料上で名称・用途が分けられているだけでは、座席の重複がないとまでは判断できません。両者の座席番号一覧や重複の内訳は、今回確認した資料では確認できませんでした。

106席を「大旗のための閉鎖席」と扱ったり、大旗エリアの席数にそのまま加算したりすることはできません。

試合ごとの変更と、チケット料金はどうなっているのか

古いビジター自由席の案内を、そのまま使わない

2026年6月24日発表の販売概要では、2026/27シーズンからビジターシート自由席を廃止し、立見可能な指定席へ変更しています。

現在の大旗エリアも、このビジター指定席の案内として読む必要があります。

また、2025年10月12日の横浜FC戦に向けた告知には、緩衝地帯の変更に伴って大旗エリア等の案内が変わった例があります。過去に変更例があることは確認できますが、これだけで現在のホーム・ビジター双方の閉鎖席数が、毎試合変動しているとは断定できません。

来場時は、基本ルールに加えて、その試合の個別案内と現地表示を確認する必要があります。

大旗使用者の課金・免除の扱いは確認できない

通常のサポーターシートやビジターシートの価格は、公式料金ページで公表されています。

ただし、今回確認した観戦案内とチケット販売資料では、大旗使用者について、どのチケットを購入するのか、専用枠をどう販売・配分するのか、追加料金や免除があるのかという一連の扱いまでは確認できませんでした。

したがって、有料・無料のいずれとも決めつけません。閉鎖部分についても、誰かが代金を負担している、あるいは負担していないとは判断できません。

料金や申込条件を分かりやすく案内することは、利用者にも周囲の観客にも、運用を理解してもらう助けになると考えます。

チケット需要が高い今、一席の意味は大きい

観戦機会を増やすという論点には、公式の完売実績が背景にあります。

対象期間公式発表で確認できる実績
2024年J1リーグ19試合中18試合でチケット完売。2024年12月19日の年次報告
2025年J1リーグリーグ戦の全席種・全席完売を達成。2025年12月17日の年次報告
2026年のJ1百年構想リーグホーム10試合すべてで全席種完売。2026年5月30日の発表
2026/27シーズンの一例10月24日の清水戦は、車いす席とリセール販売分を除いて完売。2026年9月11日の告知

これらは、それぞれの公式発表に記載された範囲です。

「ホームエリアの完売」と「ビジターを含む全席種の完売」は範囲が異なります。また、完売は販売状況を示すもので、販売済みの全席に当日必ず観客がいるという意味ではありません。

それでも、観戦したくてもチケットを買えない人が生じうる環境で、座席の使い方を見直す意義はあります。

ただし、大旗エリアの閉鎖を減らせば、同じ数だけ入場者を増やせると決まっているわけではありません。安全性、観戦時の視界、販売枠の設定を確認したうえで、実際に増やせる観戦機会を評価する必要があります。

公式の専用席と、規則に反する場所取りは分けて考える

座席利用や周囲への対応を巡るSNS上の主張について、今回の調査では個別の事実関係まで確認できていません。投稿だけで、特定の人や集団に問題があると認定することはできません。

一方で、公式ルールから区別できることはあります。

クラブが大旗運用や応援先導のために指定した場所を、定められた条件で確保することと、一般の自由席を規則に反して荷物などで確保することは、別の行為です。

2025年10月2日の告知では、ルールを逸脱した場所取りが一部にあったことを、クラブ自身が変更理由として説明しています。現在も、対象となる南スタンド自由席の最前列~30列目では、入場開始から15分間は着席による確保とし、荷物だけの確保を認めない運用が示されています。15分後も、過剰な席取りが認められるわけではありません。

ただし、この告知は、SNSで言及された特定の個人・集団の違反を裏付ける資料ではありません。

席の移動を求められた場合も、安全上の公式案内なのか、通常の観客同士の要求なのかで意味が変わります。判断がつかないときは、その場で対立を深めず、係員に場所と理由を確認するのがよいと思います。

大旗を振る人も、初めて来た人も、同じクラブを応援する仲間です。必要な案内ほど、理由が分かる穏やかな説明で伝えてほしいと考えます。

大旗を受け継ぎながら、観戦機会を増やす方法を考える

以下は、公式に決まった変更ではなく、FORGRAFT LABの提案です。

まず、区画・利用実績・申込条件を見えるようにする

見直しの前提として、次の情報が分かると議論を進めやすくなります。

  • 対象となる座席番号と、閉鎖部分・使用者用部分の内訳。
  • 大旗の使用本数、使用者数、必要な安全範囲。
  • 応援先導席との重複の有無と、販売枠への反映方法。
  • 利用希望者の申込条件、料金、利用しない場合の扱い。

個人やグループ名を公表しなくても、運用の仕組みは説明できます。

利用していないように見える場所も、旗の動作や保管に必要な可能性があります。見た目の空席だけで判断せず、実際の用途を共有することが大切です。

改善策には、それぞれ条件がある

方法安全性・視界の検討観客収容数への効果応援文化・参加のしやすさ
専用エリアの横幅を縮小する旗の大きさ、振幅、風、隣接席への影響を実地確認余剰範囲を安全に観客席へ戻せるなら、改善の可能性大旗を継続できるが、使用者間の調整が必要
座席を閉鎖せず使える場所を検討する転落防止、避難動線、広告、撮影・作業動線などの検証が必要適地が確保できれば効果を期待できるが、現時点で設置可能とは断定できない大旗を受け継ぐ選択肢。場所による一体感の変化も確認
使用本数や時間帯を見直す本数を減らしても、1本に必要な安全範囲は残る。試合前後も観客やスタッフはいる本数・時間を減らすだけで閉鎖席を開放できるとは限らない選手入場時など、象徴的な場面に力を集める方法も検討可能
タオルマフラーを一斉に掲げる接触や後方の視界に配慮。プレー中の長時間掲出は避ける専用の閉鎖席を伴わない形で実施しやすい子どもや初観戦者も、自席から参加しやすい
声援・手拍子をそろえる通路へ移動せず、周囲に配慮して参加する大旗用の安全区画を追加せず実施できる大きな道具や経験がなくても加わりやすい

タオルマフラー、声援、手拍子は、現在のホーム向け公式観戦案内・7ページで認められている応援方法です。旗やタオルの使用には、周囲の観戦・通行を妨げない配慮が求められます。

別の使用場所を探す場合も、通路やコンコース、ピッチ脇へそのまま移せばよいわけではありません。現行ルールで認められていない場所での使用を勧めるものではなく、クラブによる安全確認と運用判断が前提になります。

また、使用時間を短くする案では、旗の搬入・撤去を観客の移動とどう両立させるかまで考える必要があります。

小さな試行を、確かめながら進める

実行の順番としては、利用実績を記録し、安全に必要な範囲を確認したうえで、縮小できる部分があれば限定的に試す方法が考えられます。

評価するのは増やせた席数だけではありません。周囲の見え方、接触の危険、旗を扱う人の負担、スタッフの動きも確認し、支障があれば元の運用に戻せる形が望ましいと思います。

大旗の迫力を生かす場面と、タオルや手拍子で誰もが参加できる場面を組み合わせることもできます。参加方法が分かりやすければ、初観戦者にとって応援の輪に入るきっかけになります。参加を強制しないことも大切です。

その一席が、サンフレッチェの未来につながるかもしれない

大旗を振る人たちが守ってきた歴史には、価値があります。これからスタジアムを訪れる人たちにも、同じように価値があります。

初めて観戦した子どもが、選手のプレーに驚き、スタンドの一体感に胸を躍らせる。隣の人に応援の仕方を教えてもらい、帰り道で「また来たい」と話す。

さらに、「いつか自分もピースウイングでプレーしたい」と夢を抱く子どもが出てくれば、このスタジアムが果たす役割はもっと大きくなるはずです。

そのきっかけになるのは、一度の観戦かもしれません。そして、観戦できる一席かもしれません。

大旗を続ける人にも、これから応援に加わる人にも、気持ちよく過ごしてほしい。長く支えてきた人への敬意と、初めて来た人への歓迎が、ともに伝わるスタジアムであってほしいと思います。

過去の応援文化を大切にしながら、未来のサポーターのために観戦機会を増やす。

大旗専用エリアをどう運用するかという議論も、その目標を共有して進めていければと思います。


調査の範囲:2026年10月20日時点で、公式観戦ルールページからリンクされているホーム向け案内(本文中に2026年7月現在と表示)、ビジター向け案内(同2026年7月現在)、2026年版詳細座席図、関連する公式告知を照合しました。PDFファイル名に含まれる日付を、そのまま発表日とは扱っていません。公表資料による調査であり、クラブからの個別回答や現地での実測に基づくものではありません。各試合の実施条件は、試合別の公式案内と現地表示をご確認ください。

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