高さ約21m、重量約330t。その内部に約4,500本の伝熱管を収めた大型機器が、神戸からフランスへ渡った。
三菱重工は2026年10月15日、フランス電力(EDF)向けの取替用蒸気発生器3基の納入を完了したと発表した。神戸造船所で製造した機器で、フランス南東部にあるクルアス原子力発電所2号機に据え付けられる予定だ。
今回完了したのは、現地への納入まで。既設機器との交換や、新しい蒸気発生器を使った運転の開始ではない。EDFによると、交換工事は2027年に予定する2号機の定期検査に合わせて実施する。
蒸気発生器とは? 原子炉の熱を蒸気へ渡す大型機器
クルアス原発で採用する加圧水型原子炉(PWR)では、原子炉側の一次冷却系から、タービン側の二次冷却系へ熱を渡すために蒸気発生器を使う。
一次側の熱を伝熱管を介して二次側へ伝え、二次側で発生させた蒸気によってタービンを回す仕組みだ。蒸気発生器は、原子炉で生まれた熱を発電へつなぐ重要な機器になる。
今回納入した機器の主な仕様は、次のとおりだ。
- 高さ:約21m
- 重量:1基あたり約330t
- 伝熱管:約4,500本
- 耐圧容器:低合金鋼製
- 伝熱管:耐食性を高めたTT690合金製
TT690は、特殊な熱処理によって耐食性を高めたニッケル・クロム・鉄合金だ。高温・高圧の条件で使われる伝熱管には、大きな熱を伝える性能と、長期使用に耐える材料・製造品質が求められる。
神戸で製造し、認証取得後にフランスへ輸送
今回の3基は、出力90万kWのPWR原子力発電所向けに、三菱重工とフランスのOnet Technologiesが2019年に共同受注したものだ。
神戸での製造完了から納入までの主な経過は、次のようになる。
- 2019年:三菱重工とOnet Technologiesが共同受注
- 2024年1月:神戸造船所で製造を完了
- 2026年2月末:フランスの原子力規制要求に関する認証を取得
- 2026年10月15日:三菱重工が納入完了を発表
- 2027年:クルアス原発2号機で交換予定
EDFによると、機器は日本から船でフランスのFos-sur-Merへ運ばれ、クルアスの港を経由して、専用トレーラーで発電所へ搬入された。
約330tの大型機器は、製造が終わればすぐに使えるわけではない。規制要求への適合確認、海上輸送、現地搬送、保管、据付という工程をつなぎ、初めて設備として使える状態になる。
交換工事は2027年、約4カ月の計画
EDFは、クルアス原発2号機を2027年2月から、第4回の10年ごとの定期検査に入れる予定としている。
この中で行う蒸気発生器3基の交換工事は約4カ月を予定し、約400人が交代制で携わる計画だ。新しい機器は据付まで専用建屋で保管され、交換後は発電所の配管系統へ接続したうえで、試験・検査を行う。
なお、約4カ月は蒸気発生器の交換工事についての期間であり、定期検査全体の期間とは異なる。
現場目線では「運ぶ・外す・据える」工程に注目
大型プラント機器の更新では、新しい機器を製造する技術に加え、現地での搬入・交換計画も重要になる。
今回の案件で今後確認したいのは、旧機器の搬出方法、新しい機器の揚重方法、建屋内での移動や据付、配管接続後の検査といった工程だ。
これらの詳細は、今回確認した発表資料には示されていない。機器重量が約330tであっても、吊り具を含めた総荷重や作業半径、搬入条件が分からなければ、使用するクレーンの能力や吊り方までは判断できない。
今後、実際の交換工事が公開されれば、日本製の大型機器を海外の既設プラントへ組み込む施工の具体像も見えてくる。
まとめ
三菱重工が神戸で製造した、高さ約21m・約330tの取替用蒸気発生器3基が、フランスのクルアス原発向けに納入された。
今回の節目は現地への納入完了であり、交換工事は2027年の予定だ。
プラントの長期運用を支える仕事として、機器の製造だけでなく、認証、輸送、既設機器の撤去、新機器の据付まで、一連の工程に注目したい。
参考・出典
※本記事は2026年10月15日までに公表された情報をもとに作成しています。


