タクマ×東京ガス、清掃工場のCO₂からe-メタンへ|大田で都市ガス供給の実現性を調査

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ごみを燃やした後のCO₂を回収し、都市ガスの原料として再び使う。そのための設備と供給の仕組みを、東京・大田区で検討する計画が進みます。

タクマと東京ガスは2026年9月16日、大田清掃工場の排ガス由来CO₂と、京浜島で製造するグリーン水素を使ったe-メタン製造・都市ガス導管注入の実現可能性調査が、東京都の公募事業に採択されたと発表しました。両社の共同発表

現在は、テスト実証を含めて事業の成立条件を調べる段階です。 清掃工場のCO₂を、近隣の水素製造所と既存のガス導管につなぐ構想には、どのような意味があるのでしょうか。

大田清掃工場を起点に、都市ガス供給までを検討

今回の対象は、東京二十三区清掃一部事務組合が管理する大田清掃工場です。公表された計画の概要は、次のとおりです。

項目公表内容
CO₂の供給元大田清掃工場の焼却排ガス
CO₂回収方法省エネ型吸収液を用いる化学吸収法
水素の供給元東京都京浜島グリーン水素製造所
e-メタンの想定最大製造能力25Nm³/h
公表されたCO₂削減量約393t-CO₂/年
供給構想既存の都市ガス導管網を通じ、公共施設などを含む需要先へ供給

Nm³は、ガスの体積を標準状態に換算した単位です。製造能力とCO₂削減量は計画上の数値で、実際の製造・削減実績を示したものではありません。共同発表PDF・2ページ

東京ガスは事業全体の統括と事業化検討を担当し、タクマはCO₂回収設備の概念設計・経済性評価を担います。清掃工場側の回収技術と、ガスの製造・供給側の知見を組み合わせる体制です。

東京都の採択事業は2026〜2027年度の2か年度で、CO₂を回収し、利用先へ届けるまでの一連の仕組みを調査するものです。東京都の採択発表

e-メタンは、CO₂と水素からつくるメタン

e-メタンは、水素とCO₂を反応させる「メタネーション」によって製造する合成メタンです。メタンは都市ガスの主成分であり、既存のガス導管や利用機器を活用できることが特徴です。東京ガス・e-メタンの解説

代表的な反応は、次の式で表せます。

CO₂ + 4H₂ → CH₄ + 2H₂O

CO₂と水素から、メタンと水ができます。これは一般的な反応の説明で、今回採用する装置の詳細仕様を示すものではありません。NEDO・メタネーション関連資料

今回の構想に当てはめると、原料から利用までの流れはこうなります。

  • 大田清掃工場の排ガス → CO₂を分離・回収
  • 京浜島グリーン水素製造所 → 水素を供給
  • CO₂と水素を反応 → e-メタンを製造 → 都市ガス導管へ

ここで、燃料をつくるためのエネルギーを担うのが水素です。京浜島グリーン水素製造所は、山梨県の県営水力発電所で発電した電力を使い、水の電気分解で水素を製造しています。京浜島グリーン水素製造所

CO₂の再利用と、再生可能エネルギーからつくる水素の利用を組み合わせ、ガスとして運び、使える形にする仕組みと捉えると分かりやすくなります。

タクマが担う「CO₂回収」では、熱の使い方が重要

清掃工場の排ガスには、CO₂以外の成分も含まれています。e-メタンの原料にするには、まずCO₂を分離・回収する工程が必要です。

今回検討する化学吸収法は、吸収液にCO₂を取り込み、その液を加熱してCO₂を取り出す方式です。CO₂を取り出した液は再び吸収工程へ戻し、循環させます。

タクマは、ごみ処理施設やバイオマス発電施設の排ガスについて、ガス量が多い一方でCO₂濃度が低く、化学吸収法が適していると説明しています。同時に、CO₂を取り出す際の加熱に必要なエネルギーが課題になります。タクマ・CO₂分離回収技術の説明

このため、今回の役割分担にある「省エネ型吸収液」は、事業性を考えるうえでも注目点です。必要な熱を抑えられれば、回収設備の運転負担を小さくする方向に働きます。

設備保全の視点では、回収率とともに、熱の供給方法、吸収液の管理、排ガス性状が変わったときの運転の安定性まで見る必要があります。清掃工場でCO₂を継続して回収するには、こうした運転条件を設計に織り込むことが重要です。

関連する別の回収技術として、JFEのMOFを使ったごみ焼却排ガスからのCO₂回収も紹介しています。

大田で検討する理由は、原料と導管が近くにあること

今回の立地上の特徴は、大田清掃工場の近くに、水素製造所と都市ガス導管があることです。両社は、この近接性を生かし、原料を配管で連続供給する仕組みを検討します。共同発表

CO₂を回収できても、利用先まで運ぶ設備や運転が必要になります。水素についても、必要な量を必要なときに供給できなければ、メタン製造設備を安定して動かせません。

その点で本件は、CO₂を出す施設、水素をつくる施設、燃料を届ける導管を、同じ地域の中で接続する構想です。

FORGRAFT LABとして注目するのは、この設備同士のつながりです。配管で接続する利点を生かすには、工場の点検停止、水素の供給量、メタン製造量を合わせて考える必要があります。距離の近さを、安定供給と経済性につなげられるかが、実装に向けた見どころになります。

2026年度は触媒への影響を評価、2030年以降の事業化を目指す

発表資料には、調査中と調査後の工程が示されています。

時期公表された予定
2026年度メタネーション触媒への影響評価などのテスト実証、法規制・制度の調査
2027年度概略設計、経済性評価、事業の仕組みの検討
2028〜2030年FEED
2030年以降需要先へのe-メタン供給を含む事業化

FEEDは、建設に向けて設備構成や仕様、コストなどを具体化する基本設計の段階です。2028年以降は、実現可能性調査後の参考ロードマップとして示されています。共同発表PDF・2ページ

技術面で目を引くのは、メタネーション触媒への影響評価です。触媒は、CO₂と水素からメタンをつくる反応を進める役割を担います。清掃工場の排ガスから回収したCO₂を使う場合も、後段の反応設備で安定して利用できる品質かを確認する必要があります。

今回のテスト実証は、回収工程とメタン製造工程をつないだときの成立条件を確かめるものとして注目できます。

事業化の鍵は、水素の価格と設備全体の運転条件

e-メタンの製造には、CO₂回収に使う熱や電力に加え、水素をつくるための電力も必要です。東京ガスも、グリーン水素の製造コスト低減を、e-メタン普及の重要な課題として挙げています。東京ガス・水素製造コストの解説

今回の事業を評価するうえでは、主に次の点が重要になります。

  • 水素の調達条件:必要量を、どの価格で継続して確保できるか。
  • 回収・製造設備の運転条件:必要な熱・電力、点検停止、稼働率をどう組み合わせるか。
  • 供給先の条件:都市ガスとして供給する品質・接続条件を満たし、継続的な需要を確保できるか。

特に、水素の実証時と事業化後の条件は分けて見る必要があります。東京都の公募要項では、FS中の実証用水素は条件付きで無償提供が可能とされています。ただし運搬や配管整備などの費用は別に必要で、FS後の提供量・価格も未定です。東京都・公募要項のQ7

実証で工程が動くことと、その後も採算を確保して供給を続けられること。その両方を確かめるのが、今回の調査の重要な役割です。

CO₂削減効果は、燃料をつくって使う全体で見る

e-メタンも、燃焼すればCO₂を排出します。回収したCO₂を燃料の原料として再利用し、化石由来の天然ガスを置き換えることで、追加的な排出を抑えることが基本的な狙いです。資源エネルギー庁・メタネーションの解説

その効果を評価する際には、CO₂の回収量に加えて、水素製造、回収設備、圧縮・供給などで使うエネルギーまで含めて考える必要があります。

今回公表された年間約393トンという削減量についても、公開資料には詳細な算定条件までは示されていません。計画上の数値として受け止め、今後の検討や実証で、エネルギー使用量とともに確認していく項目です。

清掃工場を、地域の燃料供給につなげられるか

本件の特徴は、清掃工場で回収するCO₂を、近隣でつくる水素と組み合わせ、既存の都市ガス導管を通じて需要先へ届けようとする点にあります。

FORGRAFT LABが注目するのは、個々の装置の性能とともに、回収・製造・供給を一つの事業としてつなぐ設計です。

触媒への影響を確かめ、熱と電力の使い方を詰め、水素の調達価格と供給先を具体化する。その積み重ねによって、清掃工場のCO₂を地域の燃料資源として使えるかが見えてきます。

大田での調査は、ごみ処理施設とガス供給インフラの連携を、実際の立地と運転条件に落とし込む取り組みとして、今後の成果を追いたい案件です。

参考・出典

※2026年9月18日までに確認した公開資料に基づきます。

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