大栄環境と兵庫県相生市は2026年8月12日、「相生地域エネルギーセンター整備運営事業」の建設工事に先立ち、8月8日に地鎮祭を実施したと発表しました。(ディンズグループ)
相生地域エネルギーセンターは、相生市内に新設される廃棄物処理・エネルギー回収施設です。
焼却施設の最大処理能力は220t/日、平均的な処理量は200t/日。焼却方式にはストーカ式を採用し、発電施設、破砕選別施設、貯留ヤードなどを併設します。
施設稼働は2029年4月を予定しています。(相生市公式ホームページ)
ただし、この施設で特に注目したいのは処理能力の大きさだけではありません。
相生市が排出する一般廃棄物だけでなく、民間事業者が確保する産業廃棄物、下水汚泥、地域特有の課題ごみ、災害廃棄物などを一つの施設で処理し、焼却によって発生したエネルギーを発電に利用する公民連携型の廃棄物処理事業となっています。(相生市公式ホームページ)
相生地域エネルギーセンターとは
相生地域エネルギーセンターは、相生市相生字小丸の相生湾東部工業団地内に整備される新たな廃棄物処理施設です。
相生市の下水管理センター敷地の一部を利用する計画で、都市計画上の区域面積は約13,700㎡です。2026年3月24日の都市計画変更では、現在の相生市ごみ焼却場を廃止し、新たに「第2号相生地域エネルギーセンター」を追加することが正式に位置付けられました。(相生市公式ホームページ)
施設概要は次の通りです。
項目
内容
施設名
相生地域エネルギーセンター
建設地
兵庫県相生市相生字小丸
事業方式
公民連携事業
焼却方式
ストーカ式焼却炉
最大処理能力
220t/日
平均処理量
200t/日
相生市一般廃棄物分
約30t/日
併設施設
発電施設、破砕選別施設、貯留ヤード
事業主体
相生エコサービス株式会社
SPC出資者
大栄環境、三菱重工環境・化学エンジニアリング
運営開始
2029年4月予定
最大220t/日と平均200t/日は2025年の公民連携実施協定資料、一般廃棄物分約30t/日は2025~2026年の相生市資料に基づきます。(相生市公式ホームページ)
市のごみは約30t/日、それでも施設は最大220t/日
この施設でFORGRAFT LABが特に注目したいのが、相生市自身が処理する一般廃棄物量と、施設全体の処理能力との差です。
相生市議会資料によると、市内の可燃ごみ量は現在約32t/日で、5年後には約30t/日になると見込まれています。(相生市公式ホームページ)
一方、新しい相生地域エネルギーセンターの最大処理能力は220t/日です。
相生市の都市計画資料でも、一般廃棄物分を30t/日としながら、その他の産業廃棄物を含めると220t/日の施設として整理されています。(相生市公式ホームページ)
つまり、新施設を相生市の家庭ごみだけで満たすわけではありません。
相生市の一般廃棄物を確実に処理したうえで、残る処理能力を民間側が確保する産業廃棄物などに活用することが、この公民連携モデルの大きな特徴です。
都市計画資料では、施設で処理する産業廃棄物は民間企業が確保して焼却処理すると明記されています。(相生市公式ホームページ)
自治体単独では必要としない規模まで施設を大型化することで、民間廃棄物も集約し、廃棄物処理とエネルギー回収を効率化する仕組みと見ることができます。
一般廃棄物と産業廃棄物を同じ施設で処理
2026年の相生市資料では、新施設について一般廃棄物と産業廃棄物を混焼し、発生した熱エネルギーを利用して発電する施設と説明されています。(相生市公式ホームページ)
2025年に締結された公民連携実施協定では、処理対象として次の廃棄物が示されています。
- 相生市などの一般廃棄物
- 相生市の下水汚泥
- 相生市の承認を得た建築廃材など
- 海岸漂着ごみ
- 漁業系ごみ
- 農業系ごみ
- 相生市および周辺地域で発生する災害廃棄物
相生市は海に面した地域であるため、通常の家庭ごみだけでなく海岸漂着物や漁業系ごみなども地域課題となります。
新センターは、こうした多様な廃棄物を受け入れられる地域の処理拠点として整備されます。(相生市公式ホームページ)
現在の流動床炉から新施設はストーカ炉へ
相生市で現在稼働している相生市美化センターのごみ焼却場は、1995年に供用を開始しました。
処理方式は准連続燃焼式流動床炉で、処理能力は30t/8時間×2基、合計60t/8時間です。
供用開始からすでに約30年が経過しており、相生市では2013年から長寿命化計画に基づく大規模改修や設備更新を行いながら施設を使用してきました。(相生市公式ホームページ)
一方、相生地域エネルギーセンターではストーカ式焼却炉が採用されます。
つまり今回の更新では、単純に古い施設を同方式で建て替えるのではなく、
准連続燃焼式流動床炉 → ストーカ式焼却炉
へ処理方式そのものが変わります。(相生市公式ホームページ)

国内のごみ焼却施設で広く採用されるストーカ方式へ移行するとともに、処理対象を一般廃棄物だけでなく産業廃棄物などにも広げ、発電を組み合わせた新しい施設へ転換することになります。
2炉から1炉へ変更する計画も示されていた
設備構成でも興味深い変更がありました。
相生市議会が2024年に公表した資料では、相生地域エネルギーセンターについて、焼却炉数を当初の2炉から1炉へ変更する方針が示されています。(相生市公式ホームページ)
市側はその理由について、機器の数が減ることで建設コストを削減でき、それに伴って市が支払うごみ処理委託料の低減も見込めると説明しています。(相生市公式ホームページ)
一方、焼却炉が1炉の場合、設備停止時の処理継続方法が重要になります。
市議会資料では、炉を減らすことで生じるスペースなどを利用してごみピット容量を大きくすることを検討するとしています。
さらに、故障などによって事業者が所有する別の施設へごみを搬出する必要が生じた場合には、その費用を事業者側が負担し、ごみ処理委託契約にも費用負担について明記する計画が示されています。(相生市公式ホームページ)
コスト削減のため炉数を減らしながら、
ピット容量の確保+民間事業者が持つ他施設へのバックアップ処理
によって安定処理を確保する考え方です。
なお、2026年8月の地鎮祭リリースや最新の施設概要では炉数そのものは明記されていません。そのため、最終的な炉数・系列構成については、今後公開される詳細仕様も確認したいところです。(ディンズグループ)
大栄環境とMHIECがSPCを設立
実際に施設の整備・運営を担うのが、相生エコサービス株式会社です。
相生エコサービスは、大栄環境と三菱重工環境・化学エンジニアリング(MHIEC)の共同出資によって2024年10月29日に設立された特別目的会社(SPC)です。(相生市公式ホームページ)
2025年3月25日には、相生市と相生エコサービスが公民連携実施協定を締結。
役割分担として、相生市は、
- 事業用地の賃貸
- 相生市の一般廃棄物・下水汚泥の処理委託
- 関係住民への説明
- 施設整備・運営のモニタリング
を担当します。
一方、相生エコサービスは、
- 施設の設計・施工
- 施設の運営
- 維持管理
を担う計画です。(相生市公式ホームページ)
MHIECが焼却プラント技術で参画
現在の事業体制が形づくられたのは2023年です。
相生市、大栄環境、三菱重工環境・化学エンジニアリング、エックス都市研究所の4者は2023年5月30日、公民連携基本協定を締結しました。
当時の役割分担では、MHIECが焼却施設のプラント設備の設計施工業務、大栄環境が施設設計や維持監理、相生市以外から搬入される廃棄物の収集運搬などを担う計画とされていました。(Mitsubishi Heavy Industries, Ltd.)
また、4者は当時、この事業を公民連携協定を活用した国内初の取り組みと説明しています。(相生市公式ホームページ)
今回の地鎮祭にも、設計・施工側として、
- 黒田建築設計事務所
- 阿比野建設
- 三菱重工環境・化学エンジニアリング
の関係者が参列しています。(相生市公式ホームページ)
ごみを焼却するだけでなく「地域エネルギーセンター」へ
施設名が単なる「ごみ焼却場」ではなく、地域エネルギーセンターとなっているのもポイントです。
新施設では、廃棄物を焼却した際に発生する熱を利用して発電します。
さらに相生市と相生エコサービスは、発電した電力を地域で有効活用し、エネルギーの地産地消による自立・分散型社会と脱炭素社会の形成を目指しています。(相生市公式ホームページ)
大栄環境グループも、地域循環共生圏の取り組みとして、廃棄物発電の余剰電力を地域へ供給する「創エネ」事業を検討しています。(ディンズグループ)
現時点では発電設備の具体的な出力は公表されていませんが、最大220t/日の処理能力を持つ施設だけに、発電設備の仕様や地域への電力供給方法も今後注目したいポイントです。
生活環境影響調査では基準値を下回る予測
焼却施設の新設では、排ガスや騒音、振動、悪臭など周辺環境への影響も重要になります。
相生市が実施した生活環境影響調査では、
- 大気質
- 騒音
- 振動
- 悪臭
などについて施設稼働時の影響を予測しています。
煙突排ガスについても二酸化硫黄、二酸化窒素、浮遊粒子状物質、ダイオキシン類、水銀などを評価し、市はすべての調査項目で環境保全目標値を下回り、生活環境の保全に支障がないと評価しています。(相生市公式ホームページ)
2026年3月には都市計画変更も告示され、新しい相生地域エネルギーセンターが正式に都市計画上のごみ焼却場として追加されました。(相生市公式ホームページ)
2021年から進めてきた計画が建設段階へ
今回の地鎮祭は、長期間進められてきた計画がいよいよ実際の建設フェーズへ移る節目でもあります。
大きな流れを整理すると、
2021年
公民連携による新施設整備の検討を開始
2023年5月
相生市・大栄環境・MHIEC・エックス都市研究所が公民連携基本協定を締結
2024年10月
大栄環境とMHIECが相生エコサービスを設立
2025年3月
相生市と相生エコサービスが公民連携実施協定を締結
2026年3月
都市計画変更を告示
2026年8月8日
建設工事に向け地鎮祭を実施
2029年4月
施設運営開始予定
という流れになります。(ディンズグループ)
数年間にわたる調査、事業スキームの検討、SPC設立、都市計画手続きを経て、ようやく現地での建設段階へ進んだことになります。
FORGRAFT LABが注目するポイント
今回の相生地域エネルギーセンターは、一般的な自治体の清掃工場建て替えとは少し性格が異なります。
特に注目したいのが、
自治体のごみ処理需要だけで施設規模を決めていない
という点です。
相生市の可燃ごみは将来的に約30t/日と見込まれている一方、施設能力は最大220t/日。
民間側が産業廃棄物などを確保して施設を大型化し、それらを相生市の一般廃棄物と一体的に処理することで、民間の処理事業と自治体の公共サービスを同じプラントへ組み込んでいます。(相生市公式ホームページ)
さらに焼却熱から発電した電力を地域で活用することで、
廃棄物処理+民間事業+発電+エネルギーの地産地消
までを一つの施設で実現しようとしています。
これは「自治体がごみ焼却場を建設し、メーカーが施工する」という従来型の事業スキームとはかなり違います。
一方で、2024年の市議会資料で示された1炉化のように、設備コストと安定稼働をどう両立するかというプラント保全上の課題もあります。
1炉構成とする場合は、定期整備や突発停止時に通常運転とは別の処理ルートを確実に確保する必要があります。
大栄環境が持つ他の廃棄物処理施設をバックアップとして活用できる民間事業者ならではの強みが、こうした公民連携事業でどのように生かされるのかも注目したいところです。
まとめ
大栄環境と相生市は2026年8月8日、相生地域エネルギーセンターの建設工事に向けた地鎮祭を実施しました。
新施設はストーカ式焼却炉を採用し、
最大処理能力220t/日 平均処理量200t/日 2029年4月運営開始予定
となっています。(相生市公式ホームページ)
事業を担う相生エコサービスは、大栄環境と三菱重工環境・化学エンジニアリングが共同出資したSPCです。
相生市の一般廃棄物や下水汚泥だけでなく、産業廃棄物、海岸漂着ごみ、漁業系・農業系ごみ、災害廃棄物なども処理し、焼却熱を利用して発電します。(相生市公式ホームページ)
特に興味深いのは、相生市の一般廃棄物量が将来約30t/日と見込まれるのに対して、施設能力が最大220t/日に設定されていることです。
自治体だけでは必要としない処理能力を民間の廃棄物処理事業と組み合わせることで施設規模を確保し、そのエネルギーを地域へ還元する。
「公共のごみ処理施設」と「民間の廃棄物処理・エネルギー事業」を融合させた相生地域エネルギーセンターは、今後の公民連携型ごみ処理施設を考えるうえでも注目したい事例です。
大栄環境
相生地域エネルギーセンター整備運営事業の建設工事に向けた地鎮祭実施のお知らせ
https://www.dinsgr.co.jp/news/pdf/release_20260812.pdf
相生市
相生地域エネルギーセンター整備運営事業の建設工事に向けた地鎮祭実施のお知らせ
https://www.city.aioi.lg.jp/soshiki/kankyo/enecen-news20260808.html
相生市
相生地域エネルギーセンター整備運営事業に向けた公民連携実施協定の締結について
https://www.city.aioi.lg.jp/soshiki/kankyo/enecen-news20250325.html
相生市
都市計画の変更に関する図書の縦覧について(令和8年3月24日告示分)
https://www.city.aioi.lg.jp/soshiki/toshiseibi/toshikeikakutosyojuurann08-3-24.html
三菱重工環境・化学エンジニアリング
相生地域エネルギーセンター整備運営事業の推進に向けた公民連携基本協定の締結について
https://www.mhi.com/jp/group/mhiec/news/20230623.pdf


