川崎重工が世田谷清掃工場建替工事を受注|600t/日・20,000kW発電・熱供給を解説

プラントニュース・業界動向

川崎重工業株式会社が、東京二十三区清掃一部事務組合から「世田谷清掃工場建替工事」を受注しました。

今回の案件は、既存清掃工場の解体を含め、新しいごみ処理施設を建設する大型更新工事です。

建替後の処理能力は、既存の300t/日から600t/日へ増強されます。

ごみを焼却して処理するだけではなく、焼却時に発生する熱を活用して20,000kWの発電を行い、近隣の区立施設へ熱も供給する計画です。

さらに、地域のランドマークとして親しまれてきた煙突については、既存煙突の外筒を活用し、デザインを継承する方針とされています。

この記事では、世田谷清掃工場建替工事について、DB方式、処理能力の増強、ごみ発電、熱供給、既存煙突の活用という視点から整理します。

先に結論|処理能力を倍増し、発電・熱供給まで担う大型更新案件

今回の世田谷清掃工場建替工事で押さえておきたいポイントは、次のとおりです。

  • 川崎重工と大成建設の共同企業体が設計・施工を担当
  • 事業方式はDB方式。設計と建設を担う案件
  • 既存300t/日から600t/日へ処理能力を増強
  • 300t/24hのストーカ式焼却炉を2炉設置
  • 20,000kWの抽気復水タービン発電機を1基設置
  • ごみ焼却の熱を近隣区立施設へ供給
  • 既存煙突の外筒を活用し、地域のランドマーク性を継承
  • 完工予定は2033年12月
  • 契約金額は697億4,000万円(税込)

ごみ処理施設は、地域から毎日出る一般廃棄物を受け入れる、止めにくいインフラです。

そのため、新しい焼却炉を建てるだけでなく、処理能力、安定運転、発電、熱利用、保全性、地域との共生まで含めて考える必要があります。

今回の案件は、都市部の清掃工場を更新する時に求められる要素が多く詰まった事例だと思います。

世田谷清掃工場建替工事の概要

公式発表で公表されている主な内容を整理すると、次のとおりです。

項目内容
事業名世田谷清掃工場建替工事
発注者東京二十三区清掃一部事務組合
事業方式DB方式(設計・建設)
受注者川重・大成特定建設工事共同企業体
建設場所東京都世田谷区大蔵1丁目1番1号
施設エネルギー回収型廃棄物処理施設
焼却炉ストーカ式焼却炉 600t/日(300t/24h×2炉)
発電設備抽気復水タービン発電機 20,000kW×1基
契約金額697億4,000万円(税込)
完工予定2033年12月

既存工場の処理能力は、150t/24hの炉を2炉持つ合計300t/日です。

建替後は、300t/24hの炉を2炉持つ合計600t/日となります。

単純に見ると、1日の処理能力は2倍です。

都市部では、ごみの受け入れを止めることが難しいため、処理能力の確保と安定運転は特に重要になります。

DBOではなくDB方式|今回、川崎重工が担う範囲

今回の世田谷清掃工場建替工事は、DB方式です。

DBは、Design(設計)とBuild(建設)の略です。

つまり、川崎重工と大成建設の共同企業体が、施設の設計と施工を担います。

前回紹介した荏原環境プラントの大村市新ごみ処理施設は、設計・建設・運営を一括で担うDBO方式でした。

一方、今回の世田谷清掃工場建替工事は、公式発表上では設計・施工業務を行うDB方式です。

この違いは、記事を読む時に押さえておきたいポイントです。

  • DB方式:設計・建設を担う
  • DBO方式:設計・建設に加えて、完成後の運営も担う

どちらが良いという話ではなく、自治体の事業方針や既存の運営体制、施設の条件によって採用される方式は変わります。

今回の川崎重工の記事は、設計・施工の技術や、施設更新に伴う性能向上に注目する記事です。

荏原環境プラントが大村市新ごみ処理施設を受注|DBO方式・ごみ発電・20年近い維持管理を解説

300t/日から600t/日へ。処理能力を倍増する意味

建替後の世田谷清掃工場は、既存300t/日から600t/日へ処理能力を増強します。

ごみ処理施設では、処理能力が大きければ良いという単純な話ではありません。

地域から出るごみの量、他の清掃工場との役割分担、定期整備の計画、災害時の対応、収集車の搬入計画などを考えながら、必要な処理能力を確保することが重要です。

今回の新工場は、300t/24hのストーカ式焼却炉を2炉設置する計画です。

一般に複数炉の構成は、日常運転だけでなく、定期整備や補修を考える上でも運転計画を立てやすくなります。

実際の炉の運転方法や整備計画は、施設の運用条件によって決まります。

ただ、清掃工場のように毎日ごみを受け入れる施設では、設備をどう止め、どう維持し、どう処理を継続するかが非常に重要です。

Smart-ACCと水冷火格子|安定燃焼とライフサイクルコストを意識した設備

川崎重工は、新工場に改良型自動燃焼制御「Smart-ACC®」を搭載した独自の並行流焼却炉を採用するとしています。

Smart-ACC®は、川崎重工が「ごみ焼却施設を従来より高効率で安定した発電施設として機能させるための高度燃焼制御技術」と説明しているものです。

ごみは、発熱量や水分量、形状が一定ではありません。

そのため、安定して燃やすには、ごみの状態に合わせて燃焼をコントロールすることが重要になります。

焼却炉の燃焼状態が安定すれば、排ガス処理、蒸気発生、発電、設備の負担にも関わってきます。

また、水冷火格子の導入などにより、施設のライフサイクルコスト低減を狙うとされています。

火格子は、焼却炉の中でごみを燃やしながら移動させる重要な設備です。

高温環境で使われるため、耐久性や補修性、長期的な維持管理コストは、施設全体の運転に影響します。

今回の発表では、水冷火格子の詳細構造や保全計画までは公表されていません。

ただ、運転時の安定性だけでなく、長期の補修・更新まで意識した設備選定であることが読み取れます。

20,000kWのごみ発電と、近隣施設への熱供給

世田谷清掃工場の新工場には、20,000kWの抽気復水タービン発電機が1基設置されます。

ごみ焼却では、燃焼時に発生する熱をボイラーで回収し、蒸気をつくります。

その蒸気でタービンを回すことで発電します。

今回の計画では、発電だけでなく、近隣の区立施設へ熱供給も行う予定です。

ごみ処理施設は、地域のごみを処理する場所であると同時に、熱と電気を生み出すエネルギー拠点でもあります。

発電した電気は施設内で使われるほか、余剰分を活用できる場合があります。

また、蒸気や温水などの熱を近隣施設へ供給することで、燃焼時に得られるエネルギーを地域の中で有効に使うことができます。

電気だけでなく熱まで利用することは、ごみ処理施設のエネルギー利用を考える上で大きなポイントです。

今回の公式発表では、具体的な熱供給先や供給熱量、配管ルートまでは公表されていません。

そのため、本記事では「近隣区立施設へ熱供給を行う計画」として整理しています。

既存煙突の外筒を活用する。地域のランドマークを継承

今回の発表で特徴的なのが、既存煙突の外筒を活用する点です。

清掃工場の煙突は、単なる排気設備ではありません。

地域によっては、長年見慣れた景観の一部として、ランドマークの役割を持っていることがあります。

川崎重工は、既存煙突の外筒を活用することで、地域住民に長く親しまれてきたデザインを継承するとしています。

施設更新では、性能や安全性の向上が最優先です。

ただ、都市部の大型インフラでは、周辺環境との調和や、地域住民が受け入れやすいデザインも重要になります。

古いものをそのまま残すのではなく、新しい設備に更新しながら、地域の記憶や景観を引き継ぐ。

今回の煙突外筒の活用には、そうした考え方があるように感じます。

現場目線で見ると、更新工事は「新設」とは違う難しさがある

世田谷清掃工場建替工事は、既存工場の解体を含む更新工事です。

新しい土地にゼロから建てる新設工事とは違い、既存施設、周辺道路、搬入動線、近隣環境、既存構造物の扱いなど、さまざまな条件を考えながら進める必要があります。

特に都市部では、次のような点が重要になります。

  • ごみ収集車の搬入・搬出動線をどう確保するか
  • 周辺住民や近隣施設への影響をどう抑えるか
  • 既存設備の解体と新設工事をどう進めるか
  • 大型機器や鉄骨、ボイラー、タービンなどをどう搬入・据え付けるか
  • 安全な作業スペースや揚重計画をどう確保するか
  • 将来の保全を考えた点検・更新スペースをどうつくるか

プラント工事では、設備が完成すれば終わりではありません。

完成後に、運転員が安全に操作できること。

保全担当者が点検・補修しやすいこと。

クレーンや揚重設備を使って、部品を安全に交換できること。

こうした内容まで考えられているかが、長期的な設備の価値につながります。

公表されていない仕様は、今後の情報を待ちたい

今回の公式発表では、処理能力、発電機容量、熱供給、主要技術、完工予定などが公表されています。

一方で、次のような詳細は現時点では公表されていません。

  • ボイラーの蒸気条件
  • 抽気復水タービンの詳細仕様
  • 排ガス処理設備の構成
  • ごみクレーンや灰クレーンの仕様
  • 受変電設備や系統連系の詳細
  • 熱供給先の具体的な施設名
  • 熱供給量や供給方法
  • 建設中の具体的な施工計画
  • 完成後の運営・保全体制

これらは、今後の設計・施工の進捗や、発注者側の資料などで明らかになる可能性があります。

そのため、本記事では公式発表で確認できる内容を中心に整理しています。

まとめ|ごみ処理能力・発電・熱供給・地域性をまとめて更新する案件

川崎重工が受注した世田谷清掃工場建替工事は、既存300t/日から600t/日へ処理能力を増強する大型の施設更新案件です。

新工場では、20,000kWの抽気復水タービン発電機を設置し、ごみ焼却時の熱を活用して発電します。

さらに、近隣区立施設への熱供給も行う計画です。

今回のポイントをまとめると、次のとおりです。

  • DB方式で、川崎重工と大成建設の共同企業体が設計・施工を担当
  • 既存300t/日から600t/日へ処理能力を増強
  • ストーカ式焼却炉300t/24h×2炉を設置
  • 20,000kWの抽気復水タービン発電機を設置
  • Smart-ACC®と水冷火格子で安定燃焼・ライフサイクルコスト低減を狙う
  • 近隣区立施設へ熱供給を行う
  • 既存煙突の外筒を活用し、地域のランドマーク性を継承
  • 完工予定は2033年12月

ごみ処理施設は、地域の生活を支える重要なインフラです。

ごみを処理するだけでなく、発電し、熱を供給し、長期間にわたって安定運転を続けることで、地域のエネルギー利用や脱炭素にもつながります。

今後、工事の進捗や新施設の詳細が公表されれば、続報として追っていきたい案件です。

関連記事

荏原環境プラントが大村市新ごみ処理施設を受注|DBO方式・ごみ発電・20年近い維持管理を解説

JFEエンジニアリングが横浜F・マリノスへ再エネ由来電力を供給|プラント会社の地域連携と脱炭素

参考情報

川崎重工業|東京二十三区清掃一部事務組合より「世田谷清掃工場建替工事」を受注

タイトルとURLをコピーしました