カナデビアの100%子会社であるKanadevia Inova AG(以下、Inova)は2026年8月4日、モロッコ・カサブランカで計画されているごみ焼却発電事業について、33.5年間のコンセッション契約を締結したと発表しました。
年間約150万tの廃棄物を処理し、約126MWの発電出力を持つ大規模なごみ焼却発電プラントを建設する計画です。
建設場所は、アフリカでも最大級とされるメディウナ埋立処分場の隣接地。運転開始は2030年6月を予定しています。
さらに今回の事業は、ごみを焼却して発電するだけではありません。
既存埋立地の管理、50MWの太陽光発電、4MWの埋立地ガス回収・利用設備、排水処理設備などを組み合わせた「統合型」の廃棄物処理・エネルギー事業となります。
Inovaにとっては、アフリカのごみ焼却発電市場へ本格参入する最初のプロジェクトとなります。
カサブランカで年間150万tのごみを処理
今回の事業は、カサブランカ都市圏で発生する一般廃棄物を処理しながら、そのエネルギーを電力として回収する大規模Waste to Energy(WtE)プロジェクトです。
Inovaの発表によると、対象地域は人口420万人以上を抱えるカサブランカ都市圏。
新設するごみ焼却発電プラントでは、年間約150万tの廃棄物を処理します。
単純に365日で割ると約4,110t/日に相当する規模ですが、これは年間処理量から算出した参考値であり、プラントの公称日量処理能力を示すものではありません。
施設概要を整理すると、次のようになります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 建設地 | モロッコ・カサブランカ |
| 事業 | 統合型廃棄物処理発電事業 |
| 廃棄物処理量 | 約150万t/年 |
| ごみ焼却発電出力 | 約126MW(カナデビア公表値) |
| 太陽光発電 | 50MW |
| 埋立地ガス発電 | 4MW |
| 年間総発電量 | 約1TWh |
| 電力供給規模 | 約100万人分の年間電力需要相当 |
| コンセッション期間 | 33.5年 |
| 運転開始 | 2030年6月予定 |
| 事業パートナー | Kanadevia Inova、Nareva、伊藤忠商事 |
| 事業会社 | Al Beida Clean Power |
年間150万tという処理量だけを見ても、国内の一般的なごみ焼却施設とは桁の違う大型プロジェクトです。
33.5年間のコンセッション契約を締結
今回締結されたのは、単なるプラント建設工事の契約ではありません。
設計、ファイナンス、建設、運営などを含む33.5年間のコンセッション契約です。
Inovaは、モロッコの大手エネルギー・インフラ企業Nareva、伊藤忠商事とともに本事業のためのSPC(特別目的会社)を設立。
伊藤忠商事によると、事業主体は「Al Beida Clean Power」で、伊藤忠は英国子会社I-Environment Investments Ltd.を通じて出資します。
カサブランカ市政府とはコンセッション契約を締結し、モロッコ水・電力公社「ONEE」と公共サービス会社「SRM Casablanca-Settat」とは売電契約を締結しています。
カナデビアの日本語発表では、Inovaは今後、EPC(設計・調達・建設)および長期メンテナンス契約の締結を進めるとしています。
そのため現段階では、「InovaがEPCを受注済み」とするよりも、コンセッション契約が正式に締結され、EPC・長期メンテナンス契約の締結に向けて進んでいる段階と見るのが正確です。
ごみ焼却発電は約126MW
カナデビアが公表したごみ焼却発電プラントの発電出力は約126MWです。
年間総発電量は約1TWhを見込み、約100万人分の年間電力需要に相当するとしています。
カサブランカ都市圏の人口が420万人以上とされているため、単純比較では都市圏人口の約4分の1に相当する規模です。
ごみを処理するだけの施設ではなく、都市のベースロード電源の一部を担う大型エネルギーインフラとして計画されていることが分かります。
カナデビアと伊藤忠で発電出力の公表値に差
ここで一つ注意したい点があります。
カナデビアの2026年8月4日付公式リリースでは、ごみ焼却発電プラントの発電出力を約126MWとしています。
一方、同じプロジェクトについて伊藤忠商事は、ごみ焼却発電の容量を115MWと公表しています。
両社とも、これとは別に50MWの太陽光発電設備と4MWの埋立地ガス発電設備を計画している点は共通しています。
126MWと115MWの違いについて、グロス出力・ネット出力など算定条件の違いなのかを含め、公表資料からは理由を確認できませんでした。
FORGRAFT LABではカナデビアの記事として、カナデビア公式リリースの約126MWを基本値として扱います。
超大型3系列にInovaの燃焼技術を採用
今回のプロジェクトは設備面でも注目できます。
Kanadevia Inovaの発表によると、ごみ焼却発電設備は超大型の燃焼ライン3系列で構成されます。
採用される主な技術として、
- Inova Grate
- 超大型燃焼・ボイラーシステム
- 自動燃焼制御システム「Autaro™」
- SNCR脱硝設備
- 高度排ガス処理設備
- 蒸気タービン発電設備
などが挙げられています。
Autaro™はInova独自の自動燃焼制御システムで、焼却炉の運転を最適化する技術です。
排ガスについても、EUの産業排出指令(IED)および利用可能な最良の技術(BAT)に基づく基準へ適合する計画とされています。
年間150万tという大規模処理を安定して続けるには、焼却炉単体の能力だけでなく、自動燃焼制御や排ガス処理を含むプラント全体の運転安定性が重要になります。
ごみ焼却施設の炉形式や基本的な仕組みについては、FORGRAFT LABの関連記事でも詳しく解説しています。

「焼却発電+太陽光+埋立地ガス」を組み合わせる
今回のプロジェクトが特徴的なのは、ごみ焼却発電だけで完結しないことです。
計画には、
ごみ焼却発電:約126MW
太陽光発電:50MW
埋立地ガス発電:4MW
が組み込まれています。
太陽光発電設備は敷地の余剰地を利用して建設。
さらに既存のメディウナ埋立処分場から発生するメタンガスを回収し、4MWの発電設備で利用します。
廃棄物そのものから得られる熱エネルギーだけでなく、埋立地で発生するガスや敷地もエネルギー源として活用する計画です。
Inovaでは、これらを組み合わせて年間約1TWhの電力を供給するとしています。
既存のメディウナ埋立処分場も事業対象
今回のプロジェクトを理解するうえで重要なのが、既存のメディウナ埋立処分場です。
カサブランカでは、これまで廃棄物処理の多くを埋立に依存してきました。
今回建設されるごみ焼却発電プラントは、そのメディウナ埋立処分場の隣接地に建設されます。
しかし事業範囲は新しい焼却施設だけではありません。
伊藤忠商事によると、
- 既存メディウナ最終埋立処分場の運営
- 既存埋立処分場の閉鎖
- 閉鎖後の管理
- 新たな最終埋立処分場の建設
- 新しい最終埋立処分場の運営
- 埋立地ガス回収・発電
- ごみ焼却・発電
- 太陽光発電
までを一体的に進めます。
つまり今回の事業は「焼却炉を1施設建設する案件」というより、カサブランカの廃棄物処理システムそのものを、埋立中心から資源・エネルギー回収型へ転換するプロジェクトと見る方が実態に近いでしょう。
廃棄物の資源・エネルギー利用率を約80%へ
Inovaは、今回の事業によって廃棄物の資源・エネルギー利用率を約80%まで高めるとしています。
これまで埋立処分されてきた廃棄物の多くを焼却発電へ振り替えることで、埋立地への依存を大幅に低減します。
埋立処分では、有機物の分解過程でメタンが発生します。
メタンは強い温室効果を持つため、廃棄物を適切に処理すると同時に、既存埋立地から発生するメタンを回収してエネルギーとして利用することには、温室効果ガス削減という側面もあります。
伊藤忠商事では、適切な廃棄物処理と埋立量削減によって、33年6カ月で最大1億2,790万tのCO₂排出を回避できる見込みとしています。
非常に大きな数字ですが、「排出するCO₂を直接1億2,790万t削減する」という意味ではなく、従来の埋立処理を継続した場合などと比較した「排出回避量」として示されている点には注意が必要です。
将来のCCUS導入まで考慮
さらに新施設は、将来的なCO₂回収技術の導入を見据えて設計されます。
焼却施設の排ガスからCO₂を回収し、利用または貯留するCCUSを将来追加できるようにする考え方です。
現段階でCCUS設備そのものを建設するという発表ではありません。
ただし、30年以上にわたって使用する大型インフラだからこそ、将来の脱炭素技術を追加できる余地を設計段階から持たせることになります。
33.5年間という事業期間を考えると、施設完成時点だけでなく2030年代、2040年代、2050年代の環境規制や脱炭素化まで見据えた設計思想といえます。
建設時には1,200人超、運営時には約140人を雇用へ
プロジェクトの規模は雇用面にも表れています。
Inovaによると、約3.5年間の建設期間には約1,240人が工事に従事する見込みです。
さらに関連インフラで約300人の雇用を見込み、運転開始後は約140人の専門的な運営雇用を創出するとしています。
年間150万tを処理する3系列の大型焼却設備に加え、太陽光、埋立地ガス、埋立処分場、排水処理などを含むため、施設完成後も大規模な運営体制が必要になります。
2030年6月の運転開始を予定
カナデビアの日本語公式リリースでは、運転開始時期を2030年6月予定としています。
Inovaでは現在、限定的な着工通知にあたるLNTP(Limited Notice to Proceed)を含む契約手続きや、EPCに向けた準備を進めています。
コンセッション期間は建設期間を含め33.5年間です。
完成後に数年間だけ運営へ関与するのではなく、プラントの計画・建設から長期間の運営・メンテナンスまで関与する大型インフラ事業となります。
FORGRAFT LABが注目するポイント
今回の案件で特に注目したいのは、単純な海外向けごみ焼却プラントの「受注案件」ではないことです。
まず、年間150万tを処理する圧倒的な施設規模。
次に、ごみ焼却発電、太陽光発電、埋立地ガス発電、既存埋立地の閉鎖・管理、新規埋立地、排水処理までを一つの事業として扱う統合型の構成。
さらに、33.5年間のコンセッションによって、設計・建設だけでなく長期間の事業運営まで関与します。
国内のごみ処理施設ではDBOや長期包括運営といった形で「建設後の運営まで含める」案件が増えていますが、今回のカサブランカ案件は、それをさらに大きな都市インフラ単位まで広げたようなプロジェクトです。
また、Inovaにとって今回がアフリカのWaste to Energy市場への本格参入案件となります。
カナデビアは2025年度の決算資料でも、Inovaの大型EPC案件としてモロッコをターゲット市場の一つに挙げていました。
約1年後、その案件が33.5年間のコンセッション契約締結まで進んだことになります。
「建てて終わり」ではない海外プラント事業
今回のカサブランカ案件を見ると、海外の大型環境プラント事業が単純なEPCだけではなくなっていることも分かります。
従来型であれば、
プラントを設計 → 建設 → 引き渡し
という形が中心です。
今回の事業では、
事業への出資
→ ファイナンス
→ 設計・調達・建設
→ ごみ処理
→ 発電・売電
→ 長期メンテナンス
→ 埋立地管理
まで一体化されています。
カナデビアグループにとっても、プラントメーカーとして設備を納入するだけではなく、長期間にわたって事業収益を得るビジネスモデルを拡大する案件として注目できます。
まとめ
カナデビアの100%子会社Kanadevia Inovaは、モロッコ・カサブランカで計画される大規模な統合型廃棄物処理発電事業について、33.5年間のコンセッション契約を締結しました。
新しいごみ焼却発電プラントでは、
年間約150万tの廃棄物を処理し、約126MWを発電。
さらに50MWの太陽光発電設備と4MWの埋立地ガス回収・発電設備を組み合わせ、年間約1TWhの電力供給を見込みます。
既存のメディウナ埋立処分場の閉鎖・管理、新しい埋立処分場の建設・運営まで事業に含まれており、単なる焼却施設建設ではなく、カサブランカの廃棄物処理を埋立中心からエネルギー回収型へ転換する大型インフラ事業です。
運転開始は2030年6月を予定。
さらに施設は将来的なCCUS導入まで見据えて設計されます。
年間150万t、約126MW、33.5年。
規模だけを見ても非常に大きな案件ですが、FORGRAFT LABとしては、カナデビアグループがアフリカ市場へ進出し、「EPCで建てて終わり」ではなく、ファイナンス・運営・長期メンテナンスまで含む事業へ踏み込んでいる点にも注目していきたいところです。
参考情報
カナデビア株式会社
「Kanadevia Inovaがアフリカ向け初となるごみ焼却発電プラントのコンセッション契約を締結」
https://www.kanadevia.com/newsroom/news/assets/pdf/FY2026-42%20.pdf
Kanadevia Inova
「Kanadevia Inova and partners sign landmark concession & energy off-take agreements for integrated Waste to Energy project in Casablanca」
https://kanadevia-inova.com/discover/news/571be44c-b33b-4a3c-af8d-46438b1b0cf1
伊藤忠商事
「モロッコ王国初の統合型廃棄物処理発電事業に参画」
https://www.itochu.co.jp/ja/news/press/2026/260804.html

