日鉄エンジニアリングは2026年8月6日、島根県松江市から「エコクリーン松江基幹的設備改良工事」と「エコクリーン松江長期包括的運営業務委託」を受注し、契約を締結したと発表しました。
対象となるエコクリーン松江は、85t/日×3炉、合計255t/日のシャフト炉式ガス化溶融炉を備える一般廃棄物処理施設です。
2011年4月の稼働開始から約15年が経過しており、今回の基幹的設備改良によって主要機器を更新・改良するとともに、日鉄エンジニアリンググループが2041年3月まで15年間にわたって運営・維持管理を担います。
松江市の予算資料では、基幹的設備改良事業に105億2,593万円、長期包括的運営業務に251億7,736万円の債務負担行為がそれぞれ設定されています。
今回の案件は、単なる老朽設備の更新ではありません。
施設を稼働させながら大規模な基幹改良を進め、CO₂排出量を削減し、その後の15年間の運営まで一体的に担う大型の施設延命プロジェクトとなっています。
エコクリーン松江とは
エコクリーン松江は、島根県松江市鹿島町上講武にある一般廃棄物処理施設です。
処理方式はシャフト式ガス化溶融方式で、処理能力は85t/日×3炉=255t/日。2011年4月1日に供用を開始しました。
日鉄エンジニアリングによると、同社は2007年に松江市から施設建設を受注。2011年4月の稼働開始後も、同社グループが運営・維持管理を担ってきました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 施設名 | エコクリーン松江 |
| 所在地 | 島根県松江市鹿島町上講武1699-1 |
| 処理方式 | シャフト炉式ガス化溶融炉 |
| 処理能力 | 85t/日×3炉 |
| 合計処理能力 | 255t/日 |
| 供用開始 | 2011年4月1日 |
| 発注者 | 松江市 |
| 基幹改良期間 | 2026年7月~2031年3月 |
| 長期包括運営期間 | 2026年4月~2041年3月 |
日鉄エンジニアリングの発表で注目したいのが、エコクリーン松江が松江市で唯一の清掃工場であるという点です。
そのため今回の基幹改良では、長期間施設を停止して一括更新するのではなく、通常のごみ処理を継続しながら発電機や復水器などを更新・改良します。
ごみ処理を止められない施設で、既設設備を運用しながら大規模な更新を進めることになります。
基幹的設備改良に105億2,593万円を設定
松江市は2025年9月議会の補正予算で、「エコクリーン松江基幹的設備改良事業費」として105億2,593万円の債務負担行為を設定しました。
ここで注意したいのは、105億2,593万円は日鉄エンジニアリングが公表した契約額ではないという点です。
松江市が将来年度にわたって支出できるよう設定した「債務負担行為設定額」で、対象期間は2026年度から2030年度までとなっています。
基幹的設備改良工事の予定期間は、2026年7月から2031年3月末までです。
松江市が示している主な改良対象は、
- 溶融炉設備
- 焼却設備
- 排ガス処理設備
- ごみ受入設備
などです。
市は主な設備の耐用年数を概ね10~15年としており、供用開始から15年を迎えたタイミングで本格的な基幹改良に入る形となります。
一方、日鉄エンジニアリングは、発電機や復水器などの更新・改良も行い、設備の高効率化と施設延命化を進めるとしています。
CO₂排出量を5.7%削減へ
今回の基幹的設備改良は、老朽化した設備を更新するだけではありません。
設備の高効率化によって、施設から排出されるCO₂の削減も進めます。
松江市が公表した計画では、改良による**CO₂削減率は5.7%**を予定。市資料では、環境省の交付要件である3%を上回る計画とされています。
さらに、改良効果として次の数値が示されています。
| 改良効果 | 松江市の計画値 |
|---|---|
| CO₂削減率 | 5.7% |
| CO₂排出削減量 | 863t-CO₂/年 |
| コークス費用削減 | 400万円/年 |
| 売電収入増加 | 700万円/年 |
CO₂排出削減量は推定値、コークス費用削減と売電収入増加は参考値ですが、今回の基幹改良が延命化だけでなく、運転コストとエネルギー効率の改善まで狙った工事であることが分かります。
シャフト炉式ガス化溶融炉とは
エコクリーン松江で採用されているのが、日鉄エンジニアリングの得意とするシャフト炉式ガス化溶融炉です。
日鉄エンジニアリングによると、同方式は廃棄物を1,700~1,800℃の高温で溶融し、溶融物を資源として活用することで最終処分量を抑えることができます。
ごみが持つエネルギーを発電などに活用できる点も特徴です。
エコクリーン松江では、ごみをコークスや石灰石とともに炉へ投入します。
炉内では乾燥、熱分解・ガス化、燃焼・溶融と処理が進み、炉底からスラグやメタルとして排出。発生した可燃ガスは燃焼室で高温燃焼させます。
生成される溶融スラグは、アスファルト合材やコンクリート二次製品、埋戻し材などで天然砂の代替材として利用できます。
コークス削減も今回のポイント
シャフト炉式ガス化溶融炉では、安定した高温溶融を行うためにコークスが使用されています。
エコクリーン松江の公式施設説明でも、ごみをコークス・石灰石と一緒に投入することや、コークスの高い熱容量によって、ごみ質の変動や災害ごみなどにも対応できることが説明されています。
一方で、コークス使用量を抑えられれば、運転コストだけでなく化石燃料由来のCO₂排出量削減にもつながります。
松江市が今回の改良効果として年間400万円のコークス費用削減を見込んでいる点は、CO₂削減率5.7%という目標とあわせて注目したいところです。
発電設備の高効率化で売電収入も増加
もう一つ注目したいのが発電設備です。
日鉄エンジニアリングは、通常のごみ処理を継続しながら発電機や復水器などを更新・改良するとしています。
松江市は、設備改良による効果として年間700万円の売電収入増加を参考値として示しています。
ごみ処理施設の基幹改良では、単に既設設備を同等品へ置き換えるのではなく、より高効率な設備を導入することで、施設全体のエネルギー効率を改善できる可能性があります。
今回のエコクリーン松江も、延命化・CO₂削減・運転コスト削減・売電収入増加を組み合わせた改良計画となっています。
15年間の長期包括運営も日鉄エンジが受注
今回の案件で、基幹改良と並んで大きなポイントとなるのが15年間の長期包括的運営業務です。
現在の長期包括的運営業務契約は2025年度で満了し、新たな契約では2026年度から2040年度までの15年間、安定・継続的なごみ処理を行います。
日鉄エンジニアリングが公表している運営・維持管理期間も、2026年4月から2041年3月までとなっています。
松江市が長期包括的運営業務に設定した債務負担行為額は、251億7,736万円です。
その内訳として市は、
- 用役資材費:約94.2億円
- 定期整備費:約90.6億円
- 運転管理費:約63.0億円
- その他
としています。
また、2026年度から2030年度に行う基幹的設備改良とあわせて予防保全を実施し、ごみ処理施設としての性能水準を維持する方針も示されています。
建設から運営、基幹改良、その後の運営まで
FORGRAFT LABとして今回特に注目したいのが、一つのメーカーグループが施設のライフサイクルに長期間関わっていることです。
日鉄エンジニアリングは2007年にエコクリーン松江の建設を受注し、2011年4月の稼働開始後もグループで運営・維持管理を担ってきました。
そして稼働から約15年を迎えた今回、基幹的設備改良を受注。
さらに、改良後を含む2041年3月までの運営・維持管理も引き続き担当します。
流れを整理すると、
建設 → 稼働開始 → 約15年間の運営・維持管理 → 基幹改良 → さらに15年間の運営・維持管理
となります。
長期間にわたり施設を運営してきた事業者が基幹改良とその後の維持管理まで担うことで、これまで蓄積した運転・保全データや設備の状態を改良計画へ反映しやすいと考えられます。
特に今回は、松江市唯一の清掃工場を稼働させながら改良を進める案件です。
既設設備と更新設備の切替、工事中の処理能力確保、定期整備との工程調整など、実際の施工・保全面でも注目したい案件となりそうです。
「新設」だけでなく既存施設をどう長く使うか
国内のごみ処理施設では、新しい施設を建設するだけでなく、既存施設を基幹的設備改良によって延命し、長期間使用していく方法も重要になっています。
エコクリーン松江では今回、約5年間をかけて主要設備を改良し、その後も2041年3月まで長期包括的な運営・維持管理が続きます。
松江市が計画しているCO₂削減率は5.7%。
年間863t-CO₂の排出削減に加え、コークス費用を年間400万円削減し、売電収入を年間700万円増加させる効果も見込んでいます。
施設を単に「古くなったから交換する」のではなく、延命化と同時に省エネ・CO₂削減・発電効率改善まで進めるところが、今回の基幹改良の大きなポイントです。
まとめ
日鉄エンジニアリングが受注したエコクリーン松江の事業は、基幹的設備改良と15年間の長期包括運営を組み合わせた大型案件です。
エコクリーン松江は、255t/日のシャフト炉式ガス化溶融炉を備え、2011年4月から稼働しています。
今回の基幹改良は2026年7月から2031年3月まで実施され、通常のごみ処理を継続しながら発電機や復水器など主要機器を更新・改良します。
松江市は基幹改良事業に105億2,593万円、15年間の長期包括運営に251億7,736万円の債務負担行為を設定しています。
改良後はCO₂排出量を5.7%削減する計画で、施設の延命化だけでなく、コークス使用量削減や発電設備の高効率化も進められます。
建設、運営、基幹改良、そして改良後の長期運営まで一体的に担うエコクリーン松江の事例は、今後のごみ処理施設の長寿命化を考えるうえでも注目したい案件です。


