天井クレーンの暴風後・地震後点検とは|クレーン等安全規則第37条の確認ポイント

プラント保全・クレーン

天井クレーンを安全に使用するためには、毎日の作業開始前点検、月例点検、年次自主検査に加えて、台風や地震などの後に行う臨時の点検も重要です。

強い風や地震の後は、クレーン本体だけでなく、走行レール、ランウェイ、電気設備、ワイヤロープ、逸走防止装置などに、目に見えない異常が発生しているおそれがあります。

クレーン等安全規則第37条では、一定以上の暴風後または地震後にクレーン作業を行う場合、あらかじめクレーン各部分の異常の有無を点検することが定められています。

この記事では、天井クレーンを中心に、暴風後・地震後点検の対象、確認したい実務上のポイント、点検記録と異常時の対応を整理します。

暴風後・地震後点検とは|クレーン等安全規則第37条

クレーン等安全規則第37条は、暴風や地震の後にクレーンを使用する際の点検について定めた条文です。

点検が必要になるのは、次のどちらかに該当する場合です。

  • 屋外に設置されているクレーンを用いて、瞬間風速が毎秒30mを超える風が吹いた後に作業を行う場合
  • クレーンを用いて、震度4以上の地震の後に作業を行う場合

ここで注意したいのは、暴風後と地震後で対象範囲が異なることです。

暴風後の点検は、屋外に設置されているクレーンが対象です。

一方、地震後の点検は、屋外クレーンに限定されていません。

そのため、建屋内に設置されている天井クレーンであっても、震度4以上の地震後に作業を再開する場合は、クレーン各部分の異常を確認する必要があります。

また、第37条は「災害が発生した直後に必ず点検する」というよりも、「その後にクレーンを用いて作業を行う前に点検する」という考え方です。

台風や地震の後、すぐに使用しない場合でも、再使用する前には点検を行うようにします。

瞬間風速30m/s超は、作業を続けてよい基準ではない

クレーン等安全規則第37条では、瞬間風速が毎秒30mを超える風が吹いた後の点検が定められています。

ただし、これは「瞬間風速30m/s未満なら安全に作業できる」という意味ではありません。

強風によってクレーン作業に危険が予想される場合は、暴風に達する前であっても作業を中止する必要があります。

特に、屋外クレーンでは、つり荷が風を受けることによる荷振れ、走行中の逸走、レール上でのスリップ、飛来物の接触などに注意が必要です。

台風接近時は、風速の数値だけで判断せず、気象情報、現場の立地、つり荷の形状、クレーンの設置状態、社内の作業中止基準などを踏まえて、早めに作業を止めることが大切です。

第37条では「クレーン各部分」の異常を確認する

第37条では、月例点検のように細かい点検項目が列挙されているわけではありません。

そのため、クレーンの種類、設置環境、使用状況に応じて、風や地震の影響を受けるおそれがある部分を確認する必要があります。

天井クレーンであれば、主に次のような箇所を確認します。

ランウェイ・走行レール・支持部の確認

暴風や地震の後は、クレーンが走行するレールや、その支持部にずれや変形が発生していないかを確認します。

主な確認ポイントは次のとおりです。

  • ランウェイ上やレール上に飛来物、落下物、工具などが残っていないか
  • レールに曲がり、浮き、沈み、横ずれがないか
  • レール継目のボルト、目板、固定金具に緩みや脱落がないか
  • レールを支持している部分に変形、亀裂、損傷がないか
  • 車輪止め、ストッパー、バッファなどに異常がないか
  • 走行車輪がレールからずれていないか
  • 走行時に異常な振動、衝撃、異音がないか

地震後は、クレーン本体に異常がなく見えても、建屋側の梁、ランウェイ支持部、レール取付部に影響が出ている場合があります。

建屋や鉄骨側に損傷が疑われる場合は、クレーンだけで判断せず、建築設備の管理者や専門業者と連携して確認することが重要です。

走行装置・逸走防止装置の確認

屋外に設置されている走行クレーンでは、暴風によりクレーンが動いてしまう「逸走」に注意が必要です。

レールクランプ、アンカー、ストッパー、逸走防止装置などが設けられている場合は、確実に作用していたか、変形や損傷がないかを確認します。

走行装置では、次のような点も見ておきます。

  • 走行車輪の踏面やフランジに損傷がないか
  • 車輪軸、キープレート、取付ボルトに緩みや変形がないか
  • ギヤ、ピニオン、減速機周辺に異常がないか
  • 走行ブレーキが確実に作動するか
  • 走行中に片寄り、異音、振動がないか

屋外クレーンでは、強風による横荷重だけでなく、飛来物の衝突、雨水による腐食、レール上の水分やごみによるスリップにも注意が必要です。

巻上装置・ワイヤロープ・つり具の確認

地震や強風でクレーンが揺れた場合、ワイヤロープやつり具に偏った荷重が掛かっていることがあります。

巻上装置まわりでは、次のような点を確認します。

  • ワイヤロープに素線切れ、つぶれ、キンク、著しい腐食がないか
  • ドラム上で乱巻きやロープ外れが起きていないか
  • シーブ溝からワイヤロープが外れていないか
  • ロープガイド、シーブ、ドラムに損傷や異常な摩耗がないか
  • フックに変形、亀裂、口開き、外れ止めの異常がないか
  • フックブロック、サイドプレート、ボルト、割ピンなどに緩みや脱落がないか
  • バケットなどのつり具に亀裂、変形、取付部の異常がないか

地震後は、フックブロックが想定以上に揺れて、周囲の設備や建屋部材に接触している場合もあります。

つり具やフックブロックだけでなく、周囲に接触痕、塗装の剥がれ、変形などがないかも確認しておくと安心です。

電気設備・集電装置の確認

強風、雨水、結露、地震による揺れは、電気設備にも影響を与えます。

特に屋外クレーンや、建屋の開口部付近に設置された天井クレーンでは、集電装置や給電ケーブルの状態を重点的に確認します。

主な確認ポイントは次のとおりです。

  • トロリ線、集電子、集電装置に変形、脱落、接触不良がないか
  • 給電ケーブル、キャブタイヤケーブルに傷、ねじれ、引っ掛かりがないか
  • 配線、端子、接地線に緩みや損傷がないか
  • 配電盤、開閉器、接触器、コントローラーに浸水や異常な発熱がないか
  • ペンダントスイッチ、無線コントローラー、非常停止装置が正常に作動するか
  • 絶縁低下や漏電が疑われる状態がないか

雨漏りや浸水があった場合、見た目に異常がなくても絶縁低下や接触不良が発生していることがあります。

電気設備に水濡れの可能性がある場合は、安易に通電せず、必要に応じて電気担当者やメーカー、保全業者へ確認します。

安全装置・ブレーキ・操作機能の確認

第37条の点検後に実際に運転確認を行う場合は、周囲の安全を確保したうえで、無負荷・低速で慎重に状態を確認します。

確認したい主な項目は次のとおりです。

  • 巻過防止装置が正常に作動するか
  • 巻上・巻下・横行・走行の各操作が正しく動くか
  • ブレーキの効きに異常がないか
  • 停止時に不自然な惰走や大きな衝撃がないか
  • 非常停止装置が確実に作動するか
  • 異常音、異常振動、異臭、発熱がないか
  • 走行や横行の動きに引っ掛かり、片寄り、速度異常がないか

点検中は、他のクレーンとの接触、点検者の墜落、工具の落下、感電などの危険もあります。

ランウェイ上やクレーン上で点検する場合は、作業範囲の立入禁止、電源の管理、点検中表示、墜落制止用器具の使用など、点検作業そのものの安全対策も必要です。

屋内天井クレーンでも、地震後は確認が必要

「建屋の中にある天井クレーンなら、台風や地震の影響は少ない」と考えがちです。

ただし、地震後については、屋内の天井クレーンも点検対象になります。

地震では、クレーン本体だけでなく、次のような箇所に影響が出る可能性があります。

  • ランウェイ支持部やレール取付部のずれ
  • 走行車輪とレールの位置関係の変化
  • ワイヤロープやフックブロックの接触・損傷
  • 配線や集電装置のずれ、断線、接触不良
  • 建屋鉄骨、梁、設備配管など周辺設備の損傷

一方で、暴風後の点検について第37条が直接対象としているのは、屋外に設置されているクレーンです。

ただし、屋内クレーンであっても、台風後に雨漏り、浸水、停電、飛来物、建屋損傷などがあった場合は、使用前に必要な安全確認を行うことが重要です。

点検結果は3年間保存する

第37条に基づく暴風後・地震後点検の結果は、記録して3年間保存する必要があります。

点検記録には、少なくとも次のような内容を残しておくと管理しやすくなります。

  • 点検日
  • 点検のきっかけとなった事象
  • クレーンの名称、号機、設置場所
  • 点検者および確認者
  • 点検箇所ごとの結果
  • 異常の内容
  • 補修、部品交換、調整などの対応内容
  • 使用再開の判断日

暴風後であれば、風が強かった日時や現場の状況も残しておくと、後から点検の経緯を確認しやすくなります。

地震後であれば、発生日時、震度、建屋や周辺設備の被害状況も、必要に応じて記録しておくとよいでしょう。

異常を見つけた場合は、直ちに補修する

第37条の点検で異常を認めた場合は、そのまま使用を続けるのではなく、必要な補修を行う必要があります。

クレーン等安全規則第39条では、自主検査または点検で異常を認めた場合、直ちに補修することが定められています。

特に、次のような異常がある場合は、使用を停止して対応を検討します。

  • レールの変形、ずれ、固定ボルトの緩み
  • 走行車輪の脱輪、フランジ損傷、走行異常
  • ワイヤロープのキンク、乱巻き、素線切れ
  • フックやバケットなどのつり具の変形、亀裂
  • ブレーキの保持不良
  • 安全装置、非常停止装置の不作動
  • 集電装置、給電ケーブル、配線の損傷や浸水

「軽い荷だけなら使える」「少し異音がするだけ」と自己判断して運転を続けると、重大な事故につながるおそれがあります。

異常の内容に応じて、メーカー、クレーン保全業者、電気担当者、建屋管理者などへ相談し、必要な補修と安全確認を行ってから使用を再開します。

年次・月例・作業開始前点検との違い

天井クレーンの点検は、目的と実施するタイミングがそれぞれ異なります。

作業開始前点検は、その日の作業を安全に始められる状態かを確認するための点検です。

月例点検は、1か月以内ごとに安全装置、ブレーキ、ワイヤロープ、つり具、電気設備などを確認する定期自主検査です。

年次自主検査は、1年以内ごとに構造部分、機械装置、電気設備、安全装置などを総合的に確認する定期自主検査です。

そして、暴風後・地震後点検は、台風や地震などによってクレーンに通常とは異なる外力が加わった後、作業を再開する前に行う臨時の点検です。

定期点検を実施している場合でも、暴風や地震の後は別途点検が必要になるため、混同しないようにしておきましょう。

まとめ

天井クレーンの暴風後・地震後点検は、クレーン等安全規則第37条に基づく臨時の点検です。

屋外に設置されているクレーンでは、瞬間風速が毎秒30mを超える風が吹いた後に作業を行う前、クレーンでは震度4以上の地震後に作業を行う前に、各部分の異常を確認する必要があります。

特に、ランウェイ・走行レール・支持部、走行装置、逸走防止装置、ワイヤロープ、つり具、電気設備、安全装置、ブレーキなどは重点的に確認します。

また、点検結果は3年間保存し、異常を認めた場合は必要な補修を行ってから使用を再開することが重要です。

台風や地震の後は、「動くから大丈夫」と判断せず、クレーン本体だけでなく、レールや建屋側の支持部も含めて安全を確認するようにしましょう。

※本記事は、2026年6月時点の一般的な制度および点検の考え方を紹介するものです。クレーンの種類、構造、設置環境、メーカー仕様、社内規程などにより、具体的な点検方法や判定基準は異なります。実際の点検・補修については、メーカー、クレーン保全業者、所轄労働基準監督署などへ確認してください。

参考資料

クレーン等安全規則(e-Gov法令検索)

地震等災害後の点検チェックリスト(参考)

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