2026年7月22日、株式会社タクマは、群馬県の渋川地区広域市町村圏振興整備組合から「渋川地区広域圏清掃センターごみ焼却施設基幹的設備改良(長寿命化)工事」を受注したと発表しました。
渋川地区広域圏清掃センターは、1993年3月に竣工した処理能力232.5t/日のごみ焼却施設です。
今回の工事では、燃焼設備や排ガス処理設備などの基幹的な設備を更新し、工事完了後も15年以上施設を使用できる状態を目指します。
さらに、送風機のインバータ化などによって使用電力を削減し、施設から排出されるCO₂を3%以上削減する見込みです。
契約工期は2026年5月から2029年3月までの2年10か月です。
この記事では、今回公表された工事内容に加え、発注者が公表している長寿命化計画や議会資料をもとに、なぜ施設を建て替えず基幹改良を行うのか、現場ではどのような点が重要になるのかを整理します。
先に結論|既存建屋を活用しながら主要設備を大規模更新する工事
今回の工事で押さえておきたいポイントは、次のとおりです。
・受注者は株式会社タクマ
・施設の処理能力は232.5t/日
・116.25t/24hのストーカ炉を2炉設置
・既存施設は1993年3月竣工
・燃焼設備や排ガス処理設備などを更新
・工事後15年以上の施設延命化を目指す
・送風機のインバータ化などで使用電力を削減
・CO₂排出量を3%以上削減する見込み
・契約工期は2026年5月から2029年3月
・建替えと比較した結果、延命化の方がライフサイクルコストで有利と判断された
基幹的設備改良は、日常的な定期修繕や消耗部品の交換とは規模が異なります。
既存の建屋や活用可能な設備を残しながら、施設の性能や安定稼働に大きく関わる主要設備をまとめて更新・改造する工事です。
渋川地区広域圏清掃センター基幹改良工事の概要
公式発表で公表されている内容を整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発注者 | 渋川地区広域市町村圏振興整備組合 |
| 受注者 | 株式会社タクマ |
| 工事名 | 渋川地区広域圏清掃センターごみ焼却施設基幹的設備改良(長寿命化)工事 |
| 工事場所 | 群馬県渋川市行幸田3153番地2 |
| 処理能力 | 232.5t/24h |
| 炉構成 | 116.25t/24h×2炉 |
| 処理方式 | ストーカ式 |
| 既存施設竣工 | 1993年3月 |
| 主な工事内容 | 燃焼設備、排ガス処理設備などの更新 |
| 延命化目標 | 工事完了後15年以上 |
| CO₂削減目標 | 3%以上 |
| 契約工期 | 2026年5月~2029年3月 |
タクマの発表では契約金額は公表されていません。
後ほど紹介する118億6,900万円という金額は、発注者が2025年10月の議員全員協議会で示した基幹的設備改良工事の概算額です。
今回締結された正式な工事請負契約額として公表された数字ではないため、区別して見る必要があります。
渋川地区広域圏清掃センターとは
渋川地区広域圏清掃センターは、渋川市、吉岡町、榛東村で構成される渋川地区広域市町村圏振興整備組合が管理する一般廃棄物処理施設です。
ごみ焼却処理施設は、タクマHN型階段ストーカを採用した全連続燃焼式焼却炉で、116.25t/24hの炉を2基備えています。
合計処理能力は232.5t/日です。
焼却施設のほかにも、次の設備があります。
・40t/5hの粗大ごみ処理施設
・びん類選別ライン
・ペットボトル圧縮ライン
・15t/日の汚泥処理施設
・リサイクル施設
・資源物ストックヤード
ごみ焼却施設は1993年3月に竣工し、1993年4月に供用を開始しました。
2025年時点で供用開始から32年が経過しており、発注者側は施設の老朽化に伴う処理能力の低下や維持管理コストの増加を課題として挙げています。
基幹的設備改良工事とは
基幹的設備改良工事は、老朽化したごみ処理施設をすべて建て替えるのではなく、既存の建屋などを活用しながら、施設の性能を維持するために重要な設備を大規模に更新・改造する工事です。
一般的な定期修繕では、摩耗部品や消耗品の交換、部分補修、点検整備などを行います。
一方、基幹的設備改良では、定期修繕だけでは対応が難しい主要設備を対象に、施設全体の延命化を目的とした更新を行います。
環境省は、一般廃棄物処理施設の基幹的設備改良事業を循環型社会形成推進交付金の対象とし、次の取り組みを進めています。
・既存施設の長寿命化
・中長期的な財政負担の平準化と軽減
・省エネルギー化
・CO₂排出量の削減
・災害対策の強化
・廃棄物処理の安定継続
建屋が使用可能な状態であれば、すべてを解体して新施設を建設するよりも、既存資産を有効活用できる可能性があります。
ただし、古い設備をそのまま使い続けるだけではありません。
設備の健全度、補修履歴、故障リスク、今後必要となる処理能力、維持管理費、更新後の運転期間などを確認し、建替えと延命化を比較した上で判断する必要があります。
今回更新される主な設備
タクマの公式発表では、主な工事内容として次の設備が挙げられています。
・燃焼設備
・排ガス処理設備
・その他の基幹的設備
現時点では、更新対象となる機器の詳細な型式や数量までは公表されていません。
ごみ焼却施設の燃焼設備には、一般的に給じん装置、ストーカ、燃焼空気設備、焼却灰搬出設備などが関係します。
排ガス処理設備には、ばいじん、塩化水素、硫黄酸化物、窒素酸化物、ダイオキシン類などを適切に処理するための設備が含まれます。
ただし、今回どの機器がどの範囲まで更新されるのかは、今後の公表資料を確認する必要があります。
公表されていない設備仕様について、推測で断定しないよう注意したいところです。
送風機のインバータ化でCO₂を3%以上削減
今回の工事では、送風機のインバータ化などにより使用電力を削減し、CO₂排出量を3%以上削減する計画です。
ごみ焼却施設では、燃焼用空気や排ガスを送るために複数の送風機が使用されています。
送風機は比較的大きなモーターで長時間運転することが多いため、運転方法を見直すことで省エネルギー効果が期待できます。
従来のダンパーによる風量調整では、モーターを一定速度で回しながら空気の通り道を絞って調整する場合があります。
インバータを使用すれば、必要な風量に合わせてモーターの回転速度を調整できます。
必要以上に高い回転数で運転する時間を減らすことで、電力使用量の削減につながります。
ただし、インバータを設置すればそれだけで工事が完了するわけではありません。
既設設備へ導入する場合には、次のような確認も必要になります。
・既設モーターがインバータ運転に適しているか
・モーターの絶縁や冷却性能に問題がないか
・低速運転時にも必要な風量と圧力を確保できるか
・既設ダンパーや制御弁との役割をどう分けるか
・中央制御システムとの信号取り合い
・異常時やインバータ故障時の運転方法
・高調波や電磁ノイズへの対策
・既設保護装置やインターロックとの整合性
現場では、インバータ本体だけでなく、モーター、制御盤、計装、中央監視、保護回路を含めた設備全体で考える必要があります。
なぜ建替えではなく15年以上の延命化を選んだのか
発注者は、既存施設を延命化する場合と、新しい施設を建設する場合の経済性を比較しています。
2025年10月に開催された渋川地区広域市町村圏振興整備組合の議員全員協議会では、次の試算が示されました。
| 比較項目 | 既存施設を延命化する場合 | 新施設を建設する場合 |
|---|---|---|
| 工事費 | 118億6,900万円 | 297億円 |
| 想定処理能力 | 232.5t/日 | 180t/日 |
| 廃棄物処理ライフサイクルコスト | 129億9,300万円 | 140億4,600万円 |
| ライフサイクルコストの比較 | 新設より10億5,300万円安い | 延命化より10億5,300万円高い |
※工事費などの金額は、2025年10月時点の長寿命化総合計画に基づく試算です。タクマが受注した工事の正式な契約金額として公表されたものではありません。
比較対象期間は、2025年度から延命化目標年度となる2043年度までの19年間です。
点検補修費、工事費、新施設の残存価値などを含めて比較した結果、延命化する場合の方が10億5,300万円安いという試算になりました。
基幹的設備改良工事の概算額118億6,900万円のうち、交付金と交付税の見込額は56億2,300万円、組合の実質的な負担額は62億4,600万円と試算されています。
ここで注意したいのは、これらが2025年10月時点の長寿命化総合計画に基づく試算であることです。
タクマが2026年7月に発表したニュースリリースでは、正式な契約金額は公表されていません。
そのため、118億6,900万円を今回の確定契約額として扱うことはできません。
発注者は、工事を行わなかった場合には、老朽化による故障や事故、ごみの受け入れ停止など、住民生活へ大きな影響が出る可能性があると説明しています。
建替えより延命化の方が経済的に有利であり、安定したごみ処理体制を維持するためにも基幹的設備改良が必要と判断されました。
なぜタクマが受注したのか
渋川地区広域圏清掃センターの既設焼却炉は、タクマHN型階段ストーカです。
発注者は、基幹的設備改良工事の施工業者を選定するにあたり、現在の施設と同種・同規模のごみ処理施設で工事実績を持つ9社へ、入札参加の意向調査を行いました。
しかし、参加する意向を示したのはタクマ1社だけでした。
他社が参加しない理由として、技術者不足や、既存設備を改造した後の性能保証を担保することが難しい点などが挙げられています。
基幹改良工事では、新しい機器を設置するだけでなく、長年使用されてきた既存設備との互換性を確保し、施設全体として必要な性能を保証する必要があります。
機械設備、電気設備、計装設備、燃焼制御、排ガス処理設備などが相互に関係するため、責任範囲を明確にすることも重要です。
組合は2025年10月時点で、既設施設のプラントメーカーであるタクマとの随意契約を進める方針を説明していました。
2026年4月に公表された発注見通しでも、今回の工事は随意契約として掲載されています。
現場目線で注目したいのは「稼働中施設の大規模更新」
今回の工事は、新しい敷地に新施設を建設する案件ではありません。
既存のごみ処理施設を使用しながら、主要設備を順番に更新していく工事です。
ごみ処理施設は、地域から日々搬入される一般廃棄物を処理する生活インフラであり、工事の都合だけで長期間停止することは困難です。
そのため、現場では次のような調整が重要になると考えられます。
・各炉の停止時期と工事工程の調整
・定期修繕と基幹改良工事の工程調整
・既設設備を残す範囲と更新する範囲の切り分け
・新旧設備の配管、ダクト、電源、信号の取り合い
・仮設設備や仮設電源の計画
・工事中のごみ受け入れ方法
・試運転と性能確認
・工事区画と運転区画の分離
・火気作業や揚重作業の安全管理
・運転員と工事関係者の情報共有
2026年4月の発注見通しには、基幹的設備改良工事とは別に、一般廃棄物の可燃ごみ仮置場設置工事も掲載されています。
この仮置場が実際にどの工事工程で、どのように使用されるかは公表資料だけでは分かりません。
ただし、大規模更新中のごみ処理を支える準備が、別工事として進められていることが確認できます。
基幹改良は「古い設備を使い続けるだけ」ではない
基幹改良という言葉だけを見ると、古い施設を補修して使い続ける工事に見えるかもしれません。
しかし実際には、施設の劣化状況と将来の必要性能を確認し、重要設備を大規模に更新する工事です。
建屋など使用可能な部分を活用しながら、燃焼設備、排ガス処理設備、電気・計装設備などを更新することで、施設全体の寿命を延ばします。
新設工事と比べて工事範囲が小さいとは限りません。
既設設備を残したまま施工するため、新設工事にはない取り合い、制約、工程調整が発生します。
図面と現物が完全には一致しない場合や、長年の補修・改造履歴が残っている場合もあります。
既存設備の状態を現場で確認しながら進めることが、基幹改良工事の難しさの一つです。
全国のごみ処理施設で長寿命化需要が続く
タクマによると、国内で稼働する約1,000のごみ処理施設のうち、7割以上が稼働開始から20年を超えています。
平成初期からダイオキシン類対策の時期に建設された施設も、更新や大規模改良が必要な時期を迎えています。
今後も自治体では、次の選択肢を比較する案件が増えると考えられます。
・既存施設の基幹的設備改良
・同じ敷地内での建替え
・新しい敷地への移転
・他自治体との広域化
・民間施設への処理委託
建替えと基幹改良のどちらが有利かは、施設の状態、ごみ量、建屋の健全性、用地条件、財政負担、交付金、工事中の処理方法などによって変わります。
今回の渋川地区広域圏清掃センターは、長寿命化総合計画をもとに経済性を比較し、既存施設を15年以上延命する方針を選んだ事例として注目したい案件です。
まとめ|主要設備を更新し、地域のごみ処理を15年以上支える
タクマが受注した渋川地区広域圏清掃センターの基幹的設備改良工事では、燃焼設備や排ガス処理設備などの更新が行われます。
今回のポイントをまとめると、次のとおりです。
・処理能力は232.5t/日のストーカ式焼却施設
・既存施設は1993年3月竣工
・受注者は既設施設のプラントメーカーであるタクマ
・燃焼設備、排ガス処理設備などを大規模更新
・工事後15年以上の延命化を目指す
・送風機のインバータ化などでCO₂を3%以上削減
・契約工期は2026年5月から2029年3月
・延命化は新設よりライフサイクルコストで約10億5,300万円有利と試算
・稼働中の施設を更新するため、工程、停止計画、新旧設備の取り合いが重要になる
ごみ処理施設の基幹改良は、単なる老朽設備の補修ではありません。
地域のごみ処理を止めないために、既存施設を生かしながら、将来の安定運転、省エネルギー、保全性を確保する大規模な設備更新です。
今後、詳細な更新対象設備や工事の進捗が公表された場合には、引き続き確認したいと思います。
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参考情報
株式会社タクマ|ごみ処理施設の基幹改良工事を受注(渋川地区広域圏清掃センター)
https://www.takuma.co.jp/news/2026/20260722.html
渋川地区広域市町村圏振興整備組合|ごみ処理施設(清掃センター)
https://www.sknet.or.jp/c01/jigyo03-2
渋川地区広域市町村圏振興整備組合|一般廃棄物処理施設整備事業
https://www.sknet.or.jp/c01/jigyo10
渋川地区広域市町村圏振興整備組合|令和7年10月定例会・議員全員協議会会議録
https://www.sknet.or.jp/main/wp-content/uploads/2026/02/1e87286d62f14b52c9035d1d6acba215.pdf
環境省|廃棄物処理施設の基幹的設備改良マニュアル
https://www.env.go.jp/recycle/waste/3r_network/7_misc/r0804.pdf


