川崎重工が明石市新ごみ処理施設を受注|DBO方式・276t/日・AI選別とリチウム電池検出を解説

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2026年7月9日、川崎重工は、兵庫県明石市から「明石市新ごみ処理施設整備・運営事業」を受注したと発表しました。

新施設には、処理能力276t/日のストーカ式焼却炉、出力7,870kWの蒸気タービン発電機、破砕・選別を行う資源リサイクル施設が整備されます。

設計・建設だけでなく、完成後20年間の運営までを一括して担うDBO方式の事業です。

AIによる焼却炉の運転支援、遠隔監視、びんのロボット選別、X線画像解析によるリチウムイオン電池の検出など、運転員不足、作業負担、火災リスクへの対応を意識した設備が計画されています。

明石市新ごみ処理施設整備・運営事業の概要

公式発表で公表されている内容を整理すると、次のとおりです。

項目内容
事業名明石市新ごみ処理施設整備・運営事業
発注者兵庫県明石市
事業方式DBO方式
契約金額663億6,421万円(税込)
建設場所兵庫県明石市大久保町松陰1131番地ほか
建設受注者川重・村本特定建設工事共同企業体
焼却能力276t/日
炉構成138t/24h×2炉
炉形式ストーカ式焼却炉
発電設備蒸気タービン発電機7,870kW×1基
供用開始予定2031年4月
完工予定2031年7月31日
運営期間2031年4月1日~2051年3月31日
運営事業者グリーンパーク明石株式会社

資源リサイクル施設は、次の処理能力が示されています。

設備処理能力
破砕系25t/5h
缶・びん・ペットボトル16t/5h
プラスチック類14t/5h

ごみ焼却施設と資源リサイクル施設を同一事業で整備し、長期間運営する大型案件です。

DBO方式で設計・建設・運営を一括して担う

DBOは、Design、Build、Operateの頭文字を取った事業方式です。

  • Design:設計
  • Build:建設
  • Operate:運営

施設は明石市が所有し、民間事業者が設計・建設と長期運営を一括して担います。

今回の設計・建設は、川崎重工と村本建設による共同企業体が担当します。

完成後の運営は、次の3社が出資する特別目的会社「グリーンパーク明石株式会社」が担当します。

  • 川崎重工業株式会社
  • カワサキグリーンテック株式会社
  • 株式会社TMC

運営期間は20年間です。

設計段階から将来の運転、点検、補修、部品交換、人員配置を意識できることが、DBO方式の特徴です。

設備を建てる企業と運営する企業が完全に分かれる方式と比べ、ライフサイクル全体を見据えた提案が行いやすくなります。

276t/日のストーカ式焼却炉と7,870kWのごみ発電

新しい焼却施設には、138t/24hのストーカ式焼却炉を2炉設置します。

合計処理能力は276t/日です。

2炉構成は、1炉を定期整備や補修で停止する場合にも、もう1炉を運転できる構成です。

実際の運転計画は、ごみ量、ごみ質、点検工程、他施設との連携などによって決まりますが、日常的にごみを受け入れる施設では、設備停止を見据えた炉構成が重要になります。

発電設備には、出力7,870kWの抽気復水式蒸気タービン発電機を1基設置します。

明石市が公表した契約資料では、6.0MPa×450℃の高温高圧ボイラを採用し、エネルギー回収率26.5%、年間余剰電力量4万6,500MWh以上を目指す提案が示されています。

川崎重工の公式発表では、余剰電力は一般家庭約1万1,800軒分の年間使用量に相当するとされています。

発電した電力は施設内で使用し、余剰分は自営線や自己託送によって、市内の公共施設へ供給する計画です。

ごみ処理施設を単独の焼却設備としてではなく、地域のエネルギー供給拠点として活用する考え方です。

Smart-ACCとAI運転支援で燃焼を安定化

焼却炉には、川崎重工独自の改良型自動燃焼制御「Smart-ACC®」を搭載した並行流焼却炉が採用されます。

家庭ごみは、燃料のように品質が一定ではありません。

水分量、発熱量、形状、季節変動などがあり、炉内へ投入されるごみの状態は常に変化します。

燃焼状態が不安定になると、蒸気量、発電出力、排ガス処理、焼却灰の状態にも影響します。

Smart-ACCとAI運転支援システムを組み合わせることで、変動するごみ質に対応しながら、安定燃焼と発電効率の向上を図る計画です。

ただし、AIが導入されても、運転員が不要になるわけではありません。

設備の異常、燃焼状態の変化、搬入ごみの状況、各機器の劣化など、現場で確認しなければならない項目は残ります。

AIは運転員の判断を支援し、安定運転を継続するための道具として活用されます。

KEEPERによる遠隔監視と運転支援

新施設には、川崎重工の遠隔監視・支援システム「KEEPER」が導入されます。

施設から離れたサポートセンターで、ベテラン技術者が運転状況を監視し、現地の運転を支援する仕組みです。

廃棄物処理施設では、機械設備、電気設備、計装設備、ボイラ、タービン、排ガス処理設備など、多数の設備が連続して動いています。

異常の兆候を早期に把握するには、現在値だけでなく、過去の運転データや変化傾向を見ることが重要です。

遠隔支援を組み合わせることで、現地だけでは判断が難しい事象について、他施設の知見や専門技術者の支援を受けやすくなります。

人材不足への対応だけでなく、経験やノウハウを複数施設で共有する仕組みとしても注目されます。

AIロボット「K-Repros」でびんを選別

資源リサイクル施設には、AI搭載の資源ごみ選別作業支援システム「K-Repros®」が導入されます。

AIでびんの色を識別し、ロボットで回収するシステムです。

人と同じ空間で作業できる協働ロボットと、高速選別を行うパラレルピッキングロボットを併用します。

資源ごみの選別は、搬入物の形状や汚れ、破損状態が一定ではありません。

人による目視選別は柔軟性が高い一方で、繰り返し作業や不安定な姿勢、破片との接触など、身体的な負担があります。

ロボットを導入することで、次の効果が期待されています。

  • 作業員の負担軽減
  • 人的リソースの有効活用
  • 選別作業の効率化
  • 安全衛生面の改善
  • 選別品質の安定化

すべてを機械へ置き換えるのではなく、人とロボットが役割を分担する設備構成です。

X線画像解析でリチウムイオン電池を検出

今回、特に注目したいのが、AIによるX線画像解析を活用したリチウムイオン電池の検出です。

リチウムイオン電池が不燃ごみや粗大ごみに混入すると、破砕や圧縮によって内部短絡を起こし、発煙・発火するおそれがあります。

廃棄物処理施設では、リチウムイオン電池を原因とする火災が全国で問題になっています。

外観だけでは電池を見つけにくい製品もあるため、X線画像を使って内部の電池を検出する仕組みは、火災予防の重要な対策になります。

ただし、検出設備だけで火災リスクをゼロにできるわけではありません。

家庭での正しい分別、搬入時の確認、監視カメラ、温度検知、初期消火設備、残さの保管方法など、複数の対策を組み合わせる必要があります。

リチウムイオン電池火災については、以下の記事でも実例と原因を整理しています。

ごみ処理施設で相次ぐリチウムイオン電池火災|実例・原因・正しい捨て方と初期対応

世田谷清掃工場と大村市新ごみ処理施設との違い

FORGRAFT LABでは、これまで川崎重工の世田谷清掃工場建替工事と、荏原環境プラントの大村市新ごみ処理施設を紹介しました。

3案件の大きな違いは次のとおりです。

案件方式主な特徴
世田谷清掃工場DB方式600t/日、20,000kW、設計・建設
大村市新ごみ処理施設DBO方式128t/日、3,140kW、約20年運営
明石市新ごみ処理施設DBO方式276t/日、7,870kW、AI選別・電池検出

世田谷清掃工場は、設計・建設を担うDB方式です。

大村市と明石市は、設計・建設・運営を一括して担うDBO方式です。

同じごみ処理施設でも、処理能力だけでなく、事業方式、発電設備、資源選別設備、運営期間、地域への電力供給方法が異なります。

まとめ|AIと長期運営を組み合わせた地域インフラ

明石市新ごみ処理施設整備・運営事業は、ごみ焼却、発電、資源選別、公共施設への電力供給を一体化した大型DBO案件です。

今回のポイントをまとめると、次のとおりです。

  • 契約金額は663億6,421万円
  • 焼却能力は276t/日
  • 138t/日のストーカ式焼却炉を2炉設置
  • 蒸気タービン発電機は7,870kW
  • 2031年4月に供用開始予定
  • 完成後は20年間運営
  • Smart-ACCとAIで焼却炉の運転を支援
  • KEEPERで遠隔監視・運転支援
  • K-ReprosでびんをAIロボット選別
  • X線画像解析でリチウムイオン電池を検出
  • 余剰電力を市内公共施設へ供給予定

ごみ処理施設では、処理能力や発電効率だけでなく、安全性、人材確保、火災対策、長期保全まで含めた設備計画が求められています。

今回の明石市の案件は、AIや遠隔支援を単なる省人化に使うのではなく、安定運転と労働環境改善、火災予防へつなげようとする施設として注目したい案件です。

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参考情報

川崎重工|明石市より「明石市新ごみ処理施設整備・運営事業」を受注

明石市|明石市新ごみ処理施設整備・運営事業

川崎重工|並行流焼却炉・Smart-ACC・AI運転支援システム

川崎重工|遠隔監視・支援システム KEEPER

川崎重工|AI搭載 資源ごみ選別作業支援システム K-Repros

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