鉄建建設の双腕型掘削機が送電鉄塔基礎に初採用 Shinso-MaN W工法の仕組み

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硬い地盤を砕く腕と、土砂をすくう腕。その2本を狭い穴の中で切り替えながら、送電鉄塔の基礎を掘り進める。

鉄建建設は2026年9月3日、硬質地盤・山岳向けの機械式深礎工法「Shinso-MaN W®(シンソマンダブル)工法」が、送電鉄塔の基礎工事に初めて採用されたと発表した。施工を担当したジェイテックは、今回の現場で従来工法に比べて作業人員を約30%削減したという。鉄建建設の発表

双腕型の掘削機に加え、地上からの遠隔操作、作業員と機械の空間分離、土砂を地上へ運ぶ排土設備を組み合わせている。機械の動きと作業の流れを見ていくと、省人化につながる工夫が分かる。

初採用は丸森いわき幹線の鉄塔基礎

採用されたのは、東北電力ネットワークが発注した「丸森いわき幹線新設鉄塔工事」のNo.54鉄塔基礎。4本ある基礎のうち、1本に適用された。

項目発表された内容
工法Shinso-MaN W工法
発注者東北電力ネットワーク
施工ジェイテック(鉄建建設グループ)
掘削直径2.5m
掘削深さ約12m
掘削期間約1カ月
作業人員従来工法比で約30%削減

数値はこの施工事例の実績であり、約1カ月は掘削に要した期間を指す。施工実績の出典

なぜ2本の腕が必要なのか

深礎工法は、地面を縦に掘り下げた孔の中に基礎を構築する工法だ。Shinso-MaN Wが対象とするような狭い孔では、作業の種類に応じて機械を何台も並べることが難しい。

鉄建建設の開発報告では、鉄塔基礎で多い直径2.5〜3.0m程度の深礎杭について、孔内に配置できる施工機械が1台に限られることを課題に挙げている。岩を砕く作業と、砕いた土砂を掘削・積込みする作業を機械で行うには、機械やアタッチメントの交換が必要になりやすい。開発報告

そこで、1台に2本のブームを設け、役割の違う道具を持たせた。

  • ブレーカ側:硬い地盤を砕く。
  • バケット側:土砂をすくい、積み込む。

オペレーターはスイッチで使用する側を切り替える。地盤の状態に応じて「砕く→すくう」をつなげられるため、そのたびに道具を付け替える手間を省ける。双腕構造の説明

孔の中に置ける機械の台数が限られるからこそ、1台に異なる役割を持たせる設計が効いてくる。

掘削機は下、作業員は上。作業する場所を分ける

操作は地上から行う。オペレーターは孔内に設置したカメラの映像をモニターで確認し、破砕・掘削・積込みを進める。

孔内は、下部の「掘削室」と上部の「作業室」に分かれている。

空間主な作業
下部の掘削室遠隔操作の掘削機による破砕・掘削・積込み
上部の作業室作業員によるライナープレートの組立、裏込め作業

ライナープレートは孔の壁を支える鋼製の部材で、裏込めはその背面の隙間を充填する作業を指す。上部の作業室には、土砂搬出時の落下物から作業員を保護するヘッドガードを設けている。こうした空間の分離によって、掘削機と人の接触リスクを下げ、上下の工程を並行して進められる。公式の工法紹介

地上には機械を操作する人がいて、孔内の作業室では人が組立などを担う。どこを機械に任せ、どこに人を配置するかを工程ごとに整理した施工方式だ。

掘り進めるためのジャッキと、土砂を運ぶ排土設備

機械を穴の中で安定させる仕組みも欠かせない。

Shinso-MaN Wは3本の降下用ジャッキで施工機械を支え、掘削の進行に合わせて下げていく。水平ジャッキも併用し、破砕・掘削時のずれや傾きを抑える。機械を支える構造

掘った土砂は、排土レールに沿って昇降する専用の排土バケットで地上へ運ぶ。掘削機の腕に付くバケットとは別の設備だ。レールのない掘削室まで届くよう、排土バケットにはスライド機構も加えられている。排土設備の構造

土砂を砕いてすくえても、地上への搬出が滞れば次の掘削に進みにくい。機械の掘削能力と同じように、土砂の受け渡しや搬出の流れが施工全体の効率に関わってくる。

鉄道の狭い現場で培った技術を、山間地へ

この工法の背景には、鉄建建設が鉄道工事で進めてきた機械化がある。

従来の「Shinso-MaN工法」は、機械の持込みや設置が難しく、高さにも制約のある狭い場所での深礎施工に対応するために開発された。遠隔操作や、上下に分けた作業空間の考え方は、この段階から採り入れられている。従来のShinso-MaN工法

鉄建建設は2026年5月の中期経営計画でも、駅構内やホーム下などで培った杭施工技術を、硬質地盤や山岳エリアへ展開する方針を示している。大型機械を持ち込みにくい現場を機械化し、電力会社との連携を深めて鉄塔基礎への適用を進める考えだ。中期経営計画2028・35ページ

都市の鉄道工事と山間地の送電鉄塔工事では周囲の景色は大きく違う。それでも、機械を置ける場所が限られ、その中で人と設備をどう配置するかという課題には共通点がある。今回の採用は、そうした施工上の制約への対応を別の分野へ広げた事例と捉えられる。

約30%の省人化を、どの範囲の成果として見るか

今回確認できるのは、1本の鉄塔基礎への適用で、作業人員を従来工法比で約30%削減したという実績だ。地盤や深さ、設備の搬入条件が異なる現場での効果は、それぞれの施工実績で評価する必要がある。工事費や工期全体の削減率も、この人員削減率からは算出できない。今回発表された成果

FORGRAFT LABがこの工法で注目するのは、作業をつなぐ設計だ。

砕く道具とすくう道具を1台に持たせる。人が作業する場所を掘削機から分ける。そして土砂を運び出す設備まで組み込む。こうした工夫を合わせることで、限られた空間で施工を続けやすくしている。

今後は、異なる地盤や深さの現場でも、掘削・排土・組立の工程をどこまで円滑につなげられるかが見どころになる。適用事例が積み重なれば、この工法が特に効果を発揮する条件も、より具体的に見えてくるはずだ。

動きは、鉄建建設の施工サイクル紹介動画でも紹介されている。

参考・出典

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