清掃工場から回収したCO₂を、都市ガス以外にも使えないか。東京都が採択した新たな調査では、人工石灰石、産業用途、植物の育成など、複数の利用先が検討されます。
東京都は2026年9月16日、都内のCO₂排出源を起点に、回収から利活用までの実現可能性を調べる4件の提案を採択したと発表しました。その一つが、住友大阪セメントを代表事業者とする5社の提案です。参画企業はタクマ、岩谷産業、オムニア・コンチェルト、大成建設です。
東京都の選定結果では、この提案の排出源として大田清掃工場が示されています。同じ施設を対象に採択された東京ガス・タクマのe-メタン調査とは、CO₂の利用先が異なる別案件です。
今回は何を調べ、清掃工場の設備や運営にどのような課題があるのか。公表資料から確認できる範囲を整理します。
今回決まったのは「事業化」ではなく実現可能性調査
今回の採択テーマは、清掃工場を排出源としたCO₂回収・利活用モデルの実現可能性調査です。調査期間は2026~2027年度の2か年度。技術性、経済性、ライフサイクル全体の環境影響を評価するLCA、制度面などを検討します。
現時点で、公表資料から次のような情報は確認できません。
- 商用のCO₂回収設備を建設する決定
- 実際のCO₂回収量や回収率
- 採用する設備の詳細仕様
- 人工石灰石の生産量
- 事業化や供用開始の確定時期
- この案件の確定した事業費・契約金額
東京都が示す、清掃工場を排出源とした調査への負担上限額は、1件あたり2026年度・2027年度とも各1億5,000万円です。これは都の負担上限であり、今回の5社に支払われる確定額を示すものではありません。
CO₂の使い道は大きく3ルート
5社の共同発表では、清掃工場から回収したCO₂について、次の3つの利用ルートを中心に検討するとしています。
| 利用ルート | 公表された検討内容 |
|---|---|
| 人工石灰石 | CO₂を鉱物として固定し、コンクリート、紙、樹脂、ゴム、塗料などへの展開を検討 |
| 高純度CO₂ | 高純度化・液化・輸送し、炭酸飲料、ドライアイス、産業用途、建設材料分野などへの供給可能性を検討 |
| バイオ利用 | 無花粉スギ・少花粉スギや早生樹の育苗、藻類培養などへの活用を検討 |
ここでいう「人工石灰石」は、CO₂を鉱物の形で固定して利用する構想です。今回の発表は、原料の詳細や製造装置の仕様を示していません。「清掃工場の焼却灰から人工石灰石を作る」と読み替えないよう注意が必要です。
高純度CO₂のルートでは、回収したCO₂を使い道に合う品質へ整え、液化して運ぶことも検討対象になります。回収できることに加え、品質を安定させ、利用先へ届けるまでの費用や運用を成立させられるかが重要です。
5社はそれぞれ何を担当する?
共同発表による主な役割分担は、次のとおりです。
- 住友大阪セメント:代表事業者
- タクマ:CO₂回収
- 岩谷産業:輸送・供給
- オムニア・コンチェルト:バイオ利用
- 大成建設:建設分野での利用・社会実装
清掃工場でCO₂を回収するだけでは、資源としての利用は完結しません。前処理、輸送、受け入れ先の品質条件、継続的な需要までをつなぐ必要があります。今回の特徴は、回収設備だけでなく、その後の利用先まで一つの事業として検討する点にあります。
同じ大田清掃工場のe-メタン案件とは何が違う?
東京都は今回、清掃工場を排出源とする調査として、住友大阪セメントら5社の提案と、東京ガス・タクマの提案を採択しています。東京都の発表では、どちらも大田清掃工場のCO₂を対象としています。
| 案件 | 主な利用先 | 現在の段階 |
|---|---|---|
| 住友大阪セメントら5社 | 人工石灰石、産業用の高純度CO₂、育苗・藻類培養など | CO₂回収から利活用までの実現可能性調査 |
| 東京ガス・タクマ | CO₂とグリーン水素から作るe-メタンを都市ガス導管へ | e-メタン製造・供給の実現可能性調査 |
タクマは両方の提案に参画していますが、二つは別の採択案件です。e-メタン側では東京ガスが事業全体を統括し、タクマがCO₂回収設備の概念設計・経済性評価を担います。
e-メタン案件の設備構想や工程は、大田清掃工場のCO₂からe-メタンを作る計画を解説した記事で詳しく整理しています。
現場目線で見るべきポイント
FORGRAFT LABとして注目したいのは、回収方式の名称だけではなく、清掃工場を運転しながら利用先に必要なCO₂を供給できるかです。
清掃工場の排ガスを使う以上、回収設備の設置場所や既存設備との取り合い、点検停止時の扱い、回収に必要な熱や電力をどう確保するかは、実装を考える際の確認点になります。高純度CO₂として出荷するなら、品質管理に加え、液化・貯蔵・輸送の条件も重要です。
これらは今後の調査で確認したい論点であり、今回の発表で設備構成や運転方法が決定したという意味ではありません。調査結果が公表された際には、回収量、利用量、エネルギー消費、CO₂削減効果、費用の数字に注目したいところです。
なお、JFEエンジニアリングのMOFによる清掃工場排ガスの回収実証は、別の施設で回収技術そのものを実排ガスで確かめる取り組みです。今回の東京都の案件は、回収したCO₂を運び、複数の用途に利用する仕組みの成立性まで調べる点で焦点が異なります。
まとめ
住友大阪セメントら5社は、大田清掃工場のCO₂を人工石灰石、高純度CO₂、バイオ利用などにつなげる実現可能性調査に採択されました。同じ施設を対象とする東京ガス・タクマのe-メタン調査とは、別の利用ルートを検討します。
現時点では調査段階です。CO₂回収設備の建設、人工石灰石の製造開始、利用先への供給が決定したわけではありません。2026~2027年度の調査を通じ、技術と費用、環境面の評価がどこまで具体化するかを追っていきます。
※本記事は2026年9月27日時点で公表されている資料をもとに作成しました。


