三菱重工環境・化学エンジニアリング(MHIEC)は2026年5月18日、「流動床式ガス化改質システムによるごみ処理技術」について、日本環境衛生センター(JESC)から廃棄物処理技術検証結果書を取得したと発表した。
この技術がつくるのは、エタノールそのものではない。一般廃棄物を一酸化炭素(CO)と水素(H₂)を含むエタノール製造用の原料ガスに変える。検証結果書の取得は、商用のエタノール製造施設が稼働を始めたという発表ではない。
ごみから原料ガスまでの流れ
JESCの資料とMHIECの発表をもとに、主な工程を整理すると次のようになる。
| 工程 | 何をするか |
|---|---|
| 破砕・乾燥 | 搬入したごみをガス化炉へ供給しやすい状態にする |
| 流動床式ガス化炉 | 砂を流動させながら、ごみを熱分解・ガス化する |
| 溶融炉 | 熱分解ガスや未燃分をさらに処理し、灰分をスラグ化する |
| 改質炉 | 高温でタールなどを分解し、原料ガスの性状を整える |
| 後段の精製・エタノール化 | 原料ガスをさらに浄化し、微生物触媒を使うエタノール化工程へ送る |
今回の技術検証の中心は、ごみの前処理から原料ガスを取り出すまでだ。エタノール製造には、その後にガスの精製とエタノール化の設備が必要になる。
流動床式の炉やガス化溶融炉の基本的な違いは、ごみ焼却施設の方式解説でも紹介している。
なぜ「すす」と「タール」が重要なのか
原料ガスを後段の工程で使うには、COと水素を含むだけでは足りない。すすやタールが多いと、ガスの取り扱いや後段設備での利用が難しくなる。
MHIECは、流動床式ガス化炉を比較的低温で運転し、水蒸気も使いながら、すすやタールの発生を抑える構成としている。さらに溶融炉と改質炉で高温処理し、生成ガスの性状を整える。
JESCの検証結果概要書には、岩手県の積水バイオリファイナリー久慈事業所内にある実証施設のデータが掲載されている。例えば2023年11月23日の測定では、ろ過式集じん器の出口で、COが11.9%、水素が16.7%、タールが0.4mg/m³、ばいじんが0.005g/m³だった。これはその測定日の出口ガスの値であり、商用施設で常時保証される数値ではない。
また、検証資料によると、実証施設のごみ乾燥機は計画処理量20トン/日で、2024年8月1~5日の試験では21.8トン/日の処理能力を確認した。20トン/日は乾燥工程の計画値であって、商用のエタノール生産量を表すものではない。
現場で残る確認点
JESCは2023年1月から2024年8月に取得した実証データなどを検証し、2026年5月11日付で結果書を交付した。MHIECは4回の技術審査を経て、技術面で実用レベルにあるとの結果が示されたとしている。
一方、JESCの概要書には実用化時の注意点も記されている。破砕工程では混入したリチウムイオン電池の発火対策が必要だ。ガス化・改質設備では、系内への空気の流入を防ぐシールや、一時停止後の再起動時に残留する未燃ガスへの対応も重要になる。
排水処理、エタノール製造設備を併設するスペース、事業全体の経済性についても、実施設では検討が必要だ。技術検証を終えたことと、導入先・建設費・エタノールの商用生産量が確定したことは分けて見たい。
MHIECが挙げる「国内4施設、20年」の運転実績は、このシステムの基になった流動床式ガス化溶融炉に関するもの。今回のガス化改質システム全体が、同じ期間にわたり商用運転したという意味ではない。
ごみを「燃料の原料」に変える選択肢
ごみを焼却して熱や電気を回収するだけでなく、ガス化して化学品の原料に使う道を広げる技術として、この検証は興味深い。
似た方向の事業化検討として、荏原環境プラントなどによる廃プラ・木質バイオマス由来のグリーンメタノール計画も紹介している。ただし、原料、製造する製品、事業の進捗は今回のMHIECの技術と異なる。
今後は、生成ガスを利用するエタノール製造設備との接続、商用規模への拡大、運転費と保全方法についての発表を追いたい。
参考・出典
※アイキャッチは構想イメージであり、実証施設や商用設備の写真ではありません。


