JFEエンジニアリングは2026年8月27日、リチウムイオン電池などの回収・運搬・資源化サービス「iGomi™(アイゴミ)」を活用した事業が、環境省の実証事業に採択されたと発表しました。
神奈川県と大和市、海老名市、座間市、綾瀬市の4市が連携し、2026年秋ごろからリチウムイオン電池などの広域的な回収体制について検証します。
近年、ごみ処理施設ではリチウムイオン電池の混入による火災が大きな問題となっています。
今回の「iGomi」は、AIを活用した専用回収BOXを設置するだけではなく、回収・運搬・保管・資源化までを一括して管理する仕組みです。
ごみ処理施設で火災が起きてから対策するのではなく、そもそもリチウムイオン電池を通常のごみへ混入させない。
そんな「入口側からの火災対策」として注目したい取り組みです。
ごみ処理施設で深刻化するリチウムイオン電池火災
モバイルバッテリーやワイヤレスイヤホン、電子たばこ、携帯扇風機など、身の回りにはリチウムイオン電池を使用する製品が急速に増えています。
一方で、使用済み製品の捨て方が分かりにくく、不燃ごみや可燃ごみなどに混入するケースも少なくありません。
リチウムイオン電池は強い衝撃や高温に弱く、収集車やごみ処理施設の破砕設備などで押しつぶされることで発火する危険があります。
環境省によると、2024年度にはリチウムイオン電池等に起因し、消火活動が必要となった火災事故等が全国で9,923件発生しました。
発煙・発火まで含めると23,068件に上ります。
火災が大規模になれば設備の損傷だけでなく、施設停止や復旧工事、ごみ受け入れ停止など地域のごみ処理そのものへ影響する可能性があります。
ごみ処理施設にとって、リチウムイオン電池の混入防止は今後さらに重要なテーマになりそうです。
「iGomi」とは?
「iGomi」は、JFEエンジニアリングが開発した使用済み電池の回収から資源化までを一貫して管理するサービスです。
JFEエンジニアリングによると、こうした回収・運搬・資源化を一体化したサービスは国内初としています。
中心となるのが、専用回収装置「iGomi™ BOX」です。
主な特徴は次の3つです。
1.AI画像識別で分別をサポート
iGomi BOXには分別ガイドとAI画像識別機能が搭載されています。
利用者が持ち込んだ電池などをAIで識別し、適切な分別を分かりやすく案内することで、「どこへ捨てればいいのか分からない」という問題を減らします。
ここで注意したいのは、ごみ処理施設のコンベヤ上で混入した電池をAIが自動選別する設備ではないという点です。
住民が使用済み電池を持ち込む回収段階でAIを活用し、通常のごみへの混入そのものを防ぐ仕組みとなっています。
2.耐火・消火機能を備えた回収BOX
回収BOXには耐火・消火機能も備えられています。
リチウムイオン電池の中には、膨張したモバイルバッテリーなど、通常の回収ルートでは処分方法に困るものもあります。
iGomi BOXでは、万が一の発火にも備えながら、安全な回収を目指しています。
実際に綾瀬市では、リチウムイオン電池だけでなく、ニッケル水素電池やニカド電池、変形・膨張した充電式電池、電池を内蔵した小型家電なども回収対象としています。
3.回収から資源化まで一括管理
もう一つ重要なのが、回収BOXだけでサービスが終わらないことです。
JFEエンジニアリングが、
回収
↓
運搬
↓
保管
↓
資源化
までを一貫して統括管理します。
適正処理だけでなく、回収した電池がどのように処理されたのかを追跡できるトレーサビリティの確保も狙います。
神奈川県と4市で広域回収を実証
今回の環境省実証事業では、神奈川県と大和市、海老名市、座間市、綾瀬市の4市が連携します。
各市の庁舎などにiGomi BOXを1台ずつ設置。
住民から集めた使用済み電池を複数自治体からまとめて巡回・集荷し、JFEエンジニアリングが連携する資源化事業者で処理します。
複数自治体を一度に巡回することで、単独自治体で回収する場合と比較して収集運搬の効率化や自治体負担の軽減につながるかも検証されます。
実証は2026年秋ごろから行われる予定です。
綾瀬市ではすでにiGomi BOXを先行導入
今回いきなり4市で導入されるわけではありません。
神奈川県綾瀬市では、2026年6月にiGomi BOXの事前実証を行い、7月から本格稼働しています。
綾瀬市役所に設置されたBOXでは、リチウムイオン電池やモバイルバッテリーだけでなく、変形・膨張した電池や充電式電池を内蔵した小型家電なども回収しています。
JFEエンジニアリングは、この実証によってiGomi BOXがリチウムイオン電池などの回収に有効であることを確認したとしています。
その先行事例を、今回は県と4市による広域回収へ拡大する形です。
ポイントは「処理施設へ入ってから」ではなく「入る前」
FORGRAFT LABとして特に注目したいのが、この部分です。
ごみ処理施設では、搬入されたごみの中にリチウムイオン電池が混入していると、完全に取り除くことは簡単ではありません。
特に小型化したモバイル機器や電池内蔵製品は、外見だけでは判断しにくいものもあります。
破砕設備などで電池が損傷してから発火すれば、消火設備や監視設備によって被害を最小限に抑える必要があります。
iGomiはその前段階となる、
「住民が迷わず捨てられる」
↓
「通常のごみへ混入させない」
↓
「安全に回収する」
↓
「まとめて資源化する」
という仕組みを整えようとしています。
つまり、施設側で火災を検知・消火する対策とは違い、危険物を処理施設へ持ち込ませない方向からの対策です。
火災防止と資源循環を両立できるか
iGomiにはもう一つ、資源循環という側面があります。
使用済みリチウムイオン電池には、リチウムやコバルト、ニッケルなど再利用可能な資源が含まれています。
適切に分別回収できれば、火災リスクを減らすだけでなく、これらの資源を再利用するルートへ乗せることができます。
これまで「危険物をどう安全に処理するか」という側面が強かったリチウムイオン電池対策を、「安全に回収して資源として循環させる」ところまで一つの仕組みにしているのがiGomiの特徴といえます。
今後は全国の自治体への展開も
JFEエンジニアリングは今回の実証で得られた知見をもとに、リチウムイオン電池による火災事故防止と資源循環を両立する回収・処理モデルの確立を目指します。
今後は神奈川県内だけでなく、全国の自治体への展開も視野に入れています。
リチウムイオン電池を使用する製品は今後も増えていくと考えられ、ごみ処理施設側だけで対策するには限界があります。
AIを使った分かりやすい回収、発火を想定した安全な保管、広域回収による効率化、そして資源化。
iGomiの実証がどこまで効果を上げるのか。
ごみ処理施設の火災対策という意味でも、今後の展開を追っていきたい取り組みです。


