クボタと世界的な建設機械メーカーLiebherr(リープヘル)が進めてきた、新型ホイール式油圧ショベルのプロジェクトがいよいよ本格的な生産段階に入った。
Liebherrは2026年9月3日、新シリーズとして生産するホイール式油圧ショベルの最初の機体をクボタへ引き渡したと発表した。
クボタブランドでは9tクラスの「KW095」と11tクラスの「KW115」、Liebherrブランドでは「A 909 Compact」と「A 911 Compact」として展開される。
今回の取り組みで興味深いのは、単純にLiebherrの既存機へクボタのロゴを付けるだけのOEMではないことだ。
クボタはプロジェクトの初期段階からLiebherrと市場調査や製品コンセプトの策定に参加。クボタ自身も後に、KW095・KW115についてLiebherrと「共同で企画・開発した」と説明している。
Liebherrが持つホイール式油圧ショベルの技術と、クボタが得意とする小型建機・エンジン技術。
2社の強みを持ち寄って生まれた、新しい建設機械だ。
クボタにとって初のホイール式油圧ショベル
両社がホイール式油圧ショベルのOEM供給について発表したのは2025年4月。
同月にドイツ・ミュンヘンで開催された世界最大級の建設機械見本市「bauma 2025」では、KW095とKW115が一般公開された。
クボタはミニショベルを中心とする小型建設機械で世界的に高いシェアを持つメーカーだが、これまでホイール式油圧ショベルをラインアップしていなかった。
しかし欧州の建設現場では、複数のサイズや種類の建設機械を使い分けるケースが多く、クボタにもホイール式油圧ショベルを求める声が増えていたという。
そこで組んだ相手がLiebherrだ。
Liebherrは油圧ショベルだけでなく、移動式クレーン、クローラクレーン、鉱山機械、タワークレーンなど幅広い分野を手掛ける大手メーカーで、ホイール式油圧ショベルでも豊富な実績を持つ。
クボタは今回の2モデルによって、自社として初めてホイール式油圧ショベル市場へ参入する。
実はLiebherr側にとっても「初」がある
新しい分野へ進出するのはクボタだけではない。
Liebherrにとっても、今回のA 909 CompactとA 911 Compactは、同社が初めて展開する9t・11tクラスのホイール式油圧ショベルとなる。
さらにエンジンには、クボタ製「V3800 Stage V」を採用。
クボタによると、Liebherrの製品にクボタ製エンジンが搭載されるのも今回が初めてだ。
つまり今回のプロジェクトは、
「Liebherrのホイール式油圧ショベル技術」×「クボタのエンジン・小型建機技術」
という関係になっている。
クボタは、自社になかったホイール式油圧ショベルをラインアップできる。
Liebherrは、従来より小型となる9t・11tクラスへ製品レンジを広げられる。
どちらか一方だけが製品を供給するというより、両社の得意分野を組み合わせて、それぞれが新しい市場を狙う協業という点が面白い。
KW095・KW115は都市インフラ工事を狙う
クボタが公表している仕様では、KW095の機体重量は9,700~11,500kg、KW115は10,800~12,800kg。
エンジンはクボタV3800 Stage Vで、55kWまたは80kW仕様が設定される。
想定用途として挙げられているのは、道路工事をはじめ、上下水道、ガス管、電気・通信ケーブル工事などの都市インフラ工事だ。
日本では油圧ショベルといえばクローラー式を思い浮かべる人も多いが、欧州ではタイヤで走行するホイール式油圧ショベルも広く使われている。
舗装路上を比較的スムーズに移動できるため、現場内や複数の作業箇所を移動しながら施工する都市土木・道路工事との相性がいい。
今回のシリーズが欧州市場を主戦場としているのも、そうした背景がある。
旋回半径を抑えたコンパクト設計
LiebherrブランドのA 909 CompactとA 911 Compactを見ると、この新シリーズが狭い現場を強く意識していることが分かる。
後端旋回半径はA 909 Compactが1.50m、A 911 Compactが1.60m。前端側もそれぞれ2.00m、2.10mに抑えられている。
Liebherrによれば旋回に必要な円の直径は3.86m。
道路工事や都市部など、作業スペースが限られる現場での取り回しを意識した設計だ。
油圧系にはLiebherrの可変容量形アキシャルピストンポンプを使用し、エンジンと油圧制御を協調。電気油圧式のパイロット操作と比例ジョイスティックによって、滑らかな操作を狙っている。
単に小さくしただけではなく、小回りと作業性能の両立を狙った機械というわけだ。
専用生産ラインまで新設した
今回、特に注目したいのが生産体制だ。
新シリーズはドイツ南部、キルヒドルフ・アン・デア・イラーにあるLiebherr-Hydraulikbagger GmbHの工場で生産される。
ここはLiebherrグループ発祥の地でもある。
そして今回のプロジェクトに合わせ、既存工場内に9t・11tクラス専用の新しい生産ラインが設けられた。
このラインで生産するのは、LiebherrのA 909 Compact/A 911 Compactと、クボタのKW095/KW115の4モデル。
Liebherrによれば、この4モデルが同ラインの専用品となる。
同社は専用ライン化によって、生産工程の効率化やリードタイム短縮、従来からの品質基準の維持につなげるとしている。
単発のOEM供給だけなら、ここまで専用の生産体制を整える必要性は低い。
専用ラインまで新設したことからも、両社がこのシリーズを今後の重要な製品群として位置付けていることがうかがえる。
iFとRed Dot、2つのデザイン賞も獲得
市場へ本格投入される前から、新シリーズはデザイン面でも評価を受けている。
A 909 Compact、A 911 Compact、KW095、KW115のシリーズは「iF DESIGN AWARD」を受賞。
さらに「Red Dot Design Award 2026」では、最高位となる「Red Dot: Best of the Best」に選ばれた。
Red Dotの公式評価では、限られたスペースに高い性能を収めるため、設計の早い段階から機能とデザインを一体で考えた点などが評価されている。
建設機械というとエンジン出力や掘削力、耐久性といった数字へ目が行きがちだ。
しかし実際の現場では、視認性、操作性、乗降性、メンテナンス性、狭い場所での取り回しなども生産性を大きく左右する。
今回のシリーズが世界的なデザイン賞で評価されたことは、現在の建設機械に求められる性能が、単純な「力」だけではなくなっていることも示している。
「OEMだから同じ機械」で終わらせるには惜しい
今回のニュースを「クボタがLiebherrからOEM供給を受ける」という一言だけで見ると、それほど珍しい話には感じないかもしれない。
しかし経緯を追っていくと、かなり面白い。
クボタはホイール式油圧ショベルへ初参入。
Liebherrは9t・11tクラスへ初参入。
Liebherr製品としてクボタエンジンを初採用。
両社が初期段階から市場調査と製品コンセプトを共同で進め、新シリーズ専用の生産ラインまで整備した。
それぞれが自社だけで一から新分野へ進出するのではなく、相手が持つ技術と市場経験を活用して製品レンジを広げる。
メーカー同士の技術連携の一つの形としても興味深い事例だ。
2025年4月の提携発表とbaumaでの公開から約1年半。
2026年9月、最初の機体がクボタへ引き渡されたことで、クボタ×Liebherrのプロジェクトはいよいよ「発表された新型機」から「実際に生産される製品」へと動き始めた。
クボタ初となるホイール式油圧ショベルが欧州市場でどこまで受け入れられるのか。
そして今回の協業が、将来的にほかのクラスや製品へ広がっていくのか。
建設機械メーカー同士の技術連携という視点からも、今後の展開に注目したい。
参考・出典
Liebherr「Liebherr hands over its first wheeled excavators to its partner Kubota」(2026年9月3日)
クボタ「Kubota and Liebherr Announce Partnership for OEM Supply of Wheeled Excavators」(2025年4月2日)


